ケンタウルス露をふらせ、ふらせ 空き瓶を手に持って 天気輪の柱から 伸びていく線路 輝く三角標を頼りに そらへ駆け上る汽車 気づけば正面の席 君が振り向いた 天の川は水素より透き通って 時折 虹のようにきらめいた 凍った北極の雲で鋳たような 十字架は永久に立っていた 百二十万年前のくるみから 聞こえた歌声 雁の足は口のなかで甘く溶け なくなった ケンタウルス露をふらせ、ふらせ 銀河鉄道の夜 どこまでも、どこまででも 一緒に行こうか 不完全な幻想第四次の 銀河さえ通り越して どこまでも、どこまででも 君となら行ける 黄金色の苹果は香り高く きれいに剥いた皮はすっと溶けた 蠍は溺れ死にゆきながら祈る 皆の幸いを 夜の闇を今も照らし続けている 蠍の火 ケンタウルス露をふらせ、ふらせ 天上さえも過ぎて どこまでも、どこまででも ふたりきりで行こう 石炭袋に似たそらの孔 ふと恐ろしくなって 君の手を取ろうとした 君はいなかった 夢中で車掌車まで駆け抜けて 闇に身を躍らせて 浮かび上がる君の手を 確かに掴んだ 気づけば僕たちは川のなかで 水面越しの銀河と 気泡を仰ぎ見ながら 手を繋いでいた