我 月界の御子なり 望月の夜 飛車に乗りて参らむ 御簾(みす)より覗くは聞き愛づる不死の山 徒(いたずら)に流るる時 月の都を出で立ち 巡り逢ふ 秋闌(た)けて燃ゆる心 然すれば涙なりけり 思ひ焦がれ 百夜(ももよ)通いは君がため 一代(いちだい)に一度(ひとたび) 花咲かせたり 恋文(ふみ)を交わし いつか契りを結ぶ 夢路に舞ふ萩かな 宵うち過ぎて戦雲垂れ込めたり かの空より月の迎へ参(まう)で来る あまつ風 弓矢のやうに敵(あた)を砕きて 月へ追ひやらむとす いとかなし 然れど我は刀を抜きて戦ふ 思ひ焦がれ 百夜通いは君がため 一代に一度 花咲かせたり 恋文を交わし いつか契りを結ぶ 夢路に舞ふ萩かな あはれ 惜しからざりし永遠(とわ)の魂(たま) 泡沫の世も君を見れば楽し 心あらば 我が咎をば見許して 恋路に鳴く虫かな 天の羽衣さへ断ち切らむ