友子。 無事に上陸したよ。 七日間の航海で、 後戦の荒廃した土地に、 ようやく立てたというのに、 海が懐かしいんだ。 海はどうして、 希望と絶望の両端にあるんだ。 コレが、最後の手紙だ。 後で出しに行くよ。 海に拒まれた僕達の愛。 でも、想うだけなら許されるだろう? 友子。 僕の想いを受け取っておくれ。 そうすれば、 少しは僕を許すことが出来るだろう? 君は一生僕の心の中に居るよ。 結婚して子供が出来ても、 人生の重要な分岐点に来るたび、 君の姿が浮かび上がる。 重い荷物を持って家出した君。 行き交う人ごみの中に、 ポツンッと佇む君。 お金を貯めてやっと買った、 白のメリヤス帽をかぶって来たのは、 人ごみの中で、 君の存在を知らしめる為だったのかい? 見えたよ。 僕には見えたよ。 君は、 静かに立っていた。 七月の激しい太陽のように、 それ以上、 直視する事は出来なかった。 君はそんなにも、静かに立っていた。 冷静に努めた心が、 一瞬熱くなった。 だけど心の痛みを隠し、 心の声を飲み込んだ。 僕は知っている。 思慕という低俗の言葉が、 太陽の下の影のように、 追えば逃げ、逃げれば追われ。 一生。 あ、 虹だ。 虹の両端が海を越え、 僕と君を、 結び付けてくれますように。