届け届け 君へ繋がれ あの日の約束刻み 夜を駆けて 彼女の姿を消してから数日 クロナは睡眠をとることすら忘れ街の中を駆け回った けれど確たる情報は掴めないままに 行き交う人の群れへ手当たり次第に ただ無心に尋ね彷徨う 似通う姿を見かける度 希望が 生まれては消えていく その繰り返し 唯一の手掛かりは最後に交わした 行き先告げる君の言葉だけ 未だ踏み込めぬ礼拝のその地に 糸口見出せる そう信じたくて 響く響く 嘆声は空へ 心の悲鳴が波紋となり拡がる 早く早く この身を清めて 一歩でも君に近づけるのなら 遂に訪れた洗礼の朝、あの日門の前で見た顔ぶれが集まり始める中で ふと一人の少年が足を止め少女の顔覗き込む 「ねぇ君、大丈夫? すっげえ顔色悪いよ。どこかで休んだ方が……」 思えば彼女がいなくなってから眠ることすら忘れていた 見ず知らずの少年にも分かるほど酷い顔をしていただろうか そう考えながらクロナは口を開く 「大丈夫」そう答えようとした刹那 視界は揺らめいて 次第に霞む意識 遠退く彼の声 視界は白に塗りつぶされ 早く彼女を迎えに行かなくては 心はざわめくのに何故動けない? 髪撫でる春風は君の手に少し 似ているなんて夢の中思う 優しい木洩れ日に促されるよう 見知らぬ部屋の中 ふと目を覚ました ふわり笑い 少年は告げる "おはよう よく眠れたようで何よりだ" その姿に全て思い出す 私には成すべき事があると こんなことしてる場合じゃない——! 「ちょ…まだ動いちゃ駄目だよ!自分が倒れたて覚えてないの」 「でも!でも、私はどうしても洗礼を受けなきゃならないと!そうじゃないと、私は…」 「落ち着いて、洗礼なんてもう今から行っても間に合わないよ!」 「何があったら知らないけど、俺で良かったら話してみて、ね?」 ぽつりぽつり 言葉を紡いで 堪えきれなかった涙が溢れ出す 痛む痛む あの日から消えぬ 心の空洞は何で埋めればいい? 早く早く少しでも早く 会いたいと願う気持ちをぶつけた 「そうか、事情は分かた。ここであったのも何かの縁だし、俺も君の親友探しに付き合うよ」 「え?うん、でも……」 「一人より二人の方がずっといいだろう。また倒れても困るし、洗礼をすっぽかした者同士、仲良くしようぜ」 「俺はキーリア、よろしく、ええと……」 「私はクロナ、巻き込んじゃてごめなさい」 「その……よろしくね」 得られる情報に心当たりがあるわけじゃない けれどこの出会いはなぜだかとても心強く思えた