[00:03.174]その地は度重なる天災、反乱、そして疫病で荒廃していた [00:12.108]明日すら生きられるか分からない [00:15.635]そんな人々の唯一の希望は [00:18.952]国の中央に聳える高い城壁 [00:23.889]外から窺い知れないその場所は [00:27.129]選ばれたものだけが住まうことを許された聖地なのだという [00:33.476]彼らは日々跪き、頭を垂れ、そして祈る [00:43.533]「どうか、御慈悲を——神様!」 [00:49.333]In principio creavit Deus caelum et terram. [00:58.528]Deum colit qui novit. [01:03.413]Deus ex machina! [01:11.328]全て遮断するよう聳え立つ城壁 [01:15.716]独自に統治された知られざる場所 [01:20.444]人々は囁き合う あの内側にはきっと [01:25.147]理想の世界が広がっているのだと [01:34.211]御身に相応しい完全完璧な [01:38.861]依代を求め 禁忌に染める [01:43.615]欲するべきは類稀なる [01:47.612]優良 優秀 優等な遺伝子だ [01:58.636]神に選ばれし崇高なる者たちよ [02:07.987]希望を胸に さぁ方舟へと乗り込め [02:17.209]暗き明日を見て怯える日々に別れを [02:26.534]ここが君にとっての楽園となる [02:35.520]Diliges proximum tuum sicut te ipsum. [02:40.849]Beneficium accipere libertatem est vendere! [02:55.191]笑顔が絶えず溢れる ここを統治するのは [02:59.684]齢十四程の白銀の王 [03:04.281]等しく愛を与えて 優しく微笑む様は [03:08.905]まるで天の使いだと皆噂する [03:18.074]方舟を守護する全知全能たる [03:22.698]神の降臨をただ待ち侘びよ [03:27.478]絶対的な真相見抜く [03:31.449]過ち 失考 誤謬など有り得ぬ [03:42.524]天の寵愛を受けし特異なる者よ [03:51.798]暫しの優越に浸ることを赦そう [04:01.071]君が過去を捨て敬愛を誓うのなら [04:10.240]限りない幸福を約束しよう [04:22.309]ある朝、少女の元へと届いた便りは [04:27.455]神による選抜を受けた証となる [04:30.851]幸福安全保障機関アーク、即ち方舟の移住権 [04:38.818]けれと、招かれたのは彼女ひとり [04:43.756]両親と幼い兄弟を [04:46.256]この地に置き去りにしていくことに他ならなくて [04:54.152]子の幸せを願い喜び咽ぶ両親と [05:02.694]別れを惜しみ縋り泣く弟妹 [05:13.404]その手を離し少女は独りゆく [05:21.084]固い誓いを胸に携えて [05:32.526]「これは永遠の別れじゃない」 [05:35.209]「永遠になんてさせはしない」 [05:39.240]「神様のすぐそばで私は願おう」 [05:43.262]「大切な人達と幸福の先での再開へ」 [05:51.648]神に選ばれし崇高なる者たちよ [06:00.869]玲瓏な瞳で輝く未来を見据えて [06:10.090]案じる事などもう何もないのだから [06:19.311]過去も明日も全て幸福に変えてゆけ [06:28.402]Petite et accipietis, [06:32.791]pulsate et aperietur vobis. [06:37.493]Quo vadis,domine? [06:40.209]Deus ex machina! [06:52.618]閉められていた扉の向こう [06:55.118]光溢れる楽園に相応しき建築物の数々 [07:00.324]その先でまず白銀の少年は [07:02.824]穏やかな微笑みを持って少女たちを迎え入れた [07:09.649]「神の寵愛を受けた優良遺伝子たちよ」 [07:14.404]「ようこそ幸福安全保障機関アークへ、待っていたよ」