聞こえたふりで聞き流して、 見えてたようで見えてなくて、 「それなら、どうする?」 それも消えて。 ありふれた、さよならなんだ。 忘れたらそれでもういいんだ。 自分を騙すのは、得意だからさ。 羽は、もう散った。 それなのに、今も僕は。 どんな世界を、望んでるの。 昔、この景色は、緑で覆われてた。 陽が伸び始めて、草木の芽生える季節を、 春と名づけた。 見下ろした、雲の切れ間、 期待した、春の予感。 裏切られて、うつむいて。 羽を、失くしたから、 やり直しは、きかないって、 ずっと、ずっと、途方に暮れた。 昔、この星は、命で溢れてた。 深い青をした、星を覆う水たまりを、 海と名づけた。 昔、地上には、多くの人が住んだ。 地上と天上、その隙間を埋めるものを、 空と名づけた。 あれから、泣き果てて、 気づいたときには、世界は枯れていた。 それから、記憶の中の景色を求めてた。 いつか手放したもの、今更欲しくなったんだ。 記憶を辿り続けた。 視界が滲みはじめた。 きれいな景色を見つけた。 嫌いな自分を見つけた。 さあ仲直りしよう、自分を愛せたなら、 世界は色づき、現象は名を取り戻す。 夢の続きへ。 大気は震えだし、四季は巡りゆく。 時は動きだし、命の種は蒔かれゆく。 世界が始まる。