子供の頃、とほい面影。 母が心に抱いていた 大きな綺麗なチョコレットの ペーパーボクス 船乗りだった父が洋行帰りに 持ち帰った ハクライの函には、若き母の 夢の如き肖像フォトが しまわれていた。 遠い還らぬ日々と人と 異国の海と邦にはせた、 幼き心の彩られし日々。 そして、そのポートレートたちの中に一葉の 何とも不思議なプロマイドが Kと云ふイニシャルを抱いていたのです。 Kと云ふイニシャルだったね 想えば哀し はつ恋のひと キネマの銀の絹の嵐をくぐりぬけて 今日からバルセローナへ 翔んで行くのよって 哀しく微笑み仄かに消えたよ Kだから云ったじゃないか ◇三つの蕾に一つは薔薇さ (◇「約束」の花ことば) 約束は約束さ きっと守るよって 約束は約束さ きっと守るよって あいくるしい耳許にささやいたはずだよ 約束は約束さ きっと守るよって 約束は約束さ きっと守るよって 頬寄せ、指切り 由故なく泣いたよ キネマの銀の絹の嵐をくぐりぬけて それでも僕は行くよ エデンの東まで Kと云ふイニシャル追って