自分の運命 授業が早めに終わった俺はいつもより早く生徒会室に来ていた。 「は~あいつ、くるかなぁ……我ながら、ちょっと強引過ぎたか?いや、でも、あそこで声をかけなかったら、もう二度と会えないような気がしたし。」 その時、生徒会室のドアが開いて、一人の女子が入って来た。 「あ!来たか。まぁ~空いてるの席に座れ。」 席を勧めても、彼女はすぐに帰るからと言って座らなかった。沈黙に我慢できなくなった俺は、自分から小さい頃の話を切り出した。 「お前……俺を見て、何にか思い出さないか?」 「そんなところからじゃ見えないだろう。ほら、もっと俺の近くに来い!俺の目を見て!」 「どうだ?何か思い出さないか?雪だるまとか……」 「何?何のことか分らない?あ、そっか……はぁ、いや、何でもないんだ。そんな大したことじゃないから。」 俺の言葉に彼女は考え込むように黙ってしまった。もしかしたら、心の中ではこう思っていたのかもしれない。 ---道の辺の草深百合の花へ笑みに笑みしがからに妻と言べしや--- 笑いかけたことに深く意味はない。ほんの少し笑いかけただけで、勘違いしないで。 彼女が思い出せないのは仕方ない。俺だって、彼女が初恋の人じゃなかったら、今まで覚えてなかった。 でも、俺は彼女がどう思うと、一度会えて嬉しかった。確証なんてないけど。俺は少しでいいから、自分の運命を信じてみたい…… 「なぁ~おまえー、生徒会とか興味ないか?文化祭の準備をしてるんだけど、人が足りないんだ。よかったら、入ってみないか?」 彼女が顔を上げて、少し考えてみると答えた。