時間を止めて 文化祭が終わり、俺は一人で報告書を作っていた。 「ああ~こんなものか。あとで職員室に出せば終わりかな。ああ、外も真っ暗だな。そろそろ片付けてるあいつを探しに行って帰るとするかぁ~」 生徒はほとんど下校していて、物音がしない。 「夜の校舎って本当、不気味だよな。早く見つけて帰るか。」 長い渡り廊下渡りきって角を曲がったその時、何かにぶつかった。 「なっ!」 女の子だ。 「大丈夫ですか?」 俺はぶつかった女の子を立ったせようと、手を差し伸べたところで気がついた。 「お前だったのか!ごめんな、驚かせて。怪我とかしてないか?あれ、お前、泣いてないか?」 「何?泣いてない?嘘つけえ。ちょっと涙目になってるぞ。手見せてみろ。あ、ちょっと擦り剥いてるなぁ。後で手当てしてやるよ。お前、まさか俺のことを探してたのか? 偶然だな。俺もお前を探してる途中だった。こんな形で会えると思わなかったけど、会えてよかった。ふん~これも一つの運命……だよな。 ---天土の極のうらに吾が如く君に恋ふらむ人は実あらじ--- 空の果てにも、地の果てにも、私ぐらい貴方を思っている人はどこにもいない…… 俺は彼女の手を放すのを忘れて、ずっと握っていた。いつもの彼女なら、すぐに手を放せと言うのに、今日だけはなぜか大人しくなった。 もし運命が存在するなら、このまま時間を止めてめてほしい。月明かりの俺たちを照らず、その陰に赤い糸が映っていないか……俺は必死に探していた。