悲しい想像 いつの間にか、日差しが落ちるのが早くなっていた。新しい生徒会長も決まり、俺は引き継ぎに終われていた。 ふと気づくと生徒会室には二人だけになっていた。二人きりの長い沈黙に耐えられなくなった俺は、自分から彼女を話しかけた。 「ほかの役員たちも帰ったし、俺たちもそろそろ帰るか。どうした?さきから黙ってるけど。そう言えば、今日はいつもより静かだな~顔も赤いし、足もふらふらしてる。」 「何?少し風引いてる?仕方ないな。家まで送っててやるよ。言っておくけど、今日だけだからなぁ。」 少しの間があって、彼女は俺の目をまっすぐに見つめた。 「ん?どうかしたか?帰るんだろう。」 俺がそう言うと、彼女は机の上を片付け始めた。その様子を見つめていると、不意に立ち上がった彼女が、目の前でゆっくりと倒れた。 「おい!どうしたんだよ!すごい熱がある。しっかりしろ!目を開けろうよ!だめだ!全然起きない。早く保健室に運ばないと! まだ先生いるよな……もっとちゃんと見ててやればよかった……本当にごめんな。」 彼女を抱えると、俺は保健室へ駆け出した。 ---わが背子にまたは逢はじかと思へばか今今朝の別れのすべなかりつる--- 別れの予感がする。悲しい気持ちがもう終わりのサインを告げる。 頭の中が真白になる。何で俺は彼女の様子が可笑しいことに気づかなかったんだろう。いつだって、一番に彼女のことを考えてた...一番に見てたはずなのに…… 頭の中ではこのまま彼女はどうなってしまうんだろうと言う悲しい想像が浮かんでは消えた行った。