欲しかった言葉 俺は一人で屋上のフェンスを寄り掛かって空を見ていた。 「生徒会の引き継ぎも無事終わったし。俺、もう生徒会長じゃないんだな~」 その時、屋上のドアが開いて、彼女が入ってきた。 「遅かったな。もう熱下がったのか?まったく、俺の前で倒れるなんて、本当いい度胸をしてる。ふんふん~嘘だよ。そんな顔するなって。そうだ。これを渡したかったんだ。 椿のプローチ。これはお前のものだから、返す。本当はあの日ちゃんと返せればよかったんだけど。それどころじゃなかったから。お前のもので……間違いないか?」 「そっか……やっぱり、初恋の女の子っはお前だったんだなぁ。な、改めて聞いてほしことがある。俺は、お前に会いたくて、まだ会える日をずっと夢見てた。 会った頃は初恋の女の子とお前は別々の人じゃないかって思ったこともあった。心のどこかでは確信してたけど……俺は、お前が思いださない限り、怖くて聞けなかった。 でも、お前と一緒にいるうちに、いいところとか、だめなところとか、いろいろなお前を知っていくうちに、お前自身が好きになってた。 今なら分かる。お前が初恋の女の子じゃなくても、俺はお前に恋していた。 お前が好きだ。もうこの手を放したくない。俺と付き合え!赤い糸が本当にあるのなら、お前と繋がっているような気がするんだ。俺たちの赤い糸の長さを、もっと縮めたい。 見えなくてもいいから、お前の赤い糸は俺と繋がっているって、実感してほしい。言っとくけど、お前に断る権利はないぞ。何年待たされたと思ってるんだ?」 ---君が行く 道の長手を繰り畳み 焼き滅ぼさむ 天の火もがも--- 貴方が歩いて行く道を全部手繰り寄せて、焼いてしまえるような奇跡の炎がほしい。 彼女は少しの間があってから、ギュッと俺の肩にしがみ付いてきた。そして、小声で俺がずっと欲しかった言葉を言ってくれた。 「それ、本当か?お前も俺のことが好きって、今そう聞こえた。嘘じゃないよな。」 「ありがとう。すごく嬉しい。俺の初恋はお前だ。今なら自信を持ってやる。だから、これからずっと傍にいてくれ。 もしお前が俺を忘れても、また絶対に思い出させてやる。もう絶対に放さない。