大切な物 それから何年か経ち、俺は大人になった。相変わらず俺たちは一緒にいる。時には喧嘩をしたり、笑いあって、あたり前だけど、大切な毎日を過ごしながら、ここまでやってきた。 「おい!前が持ってきた荷物はここでいいのか?」 「え?違う?あっちの部屋?分かった。運んでおく。お前はそっちよろしくな。俺は向こうの部屋で自分の荷物出してるから。ああ~でも、重い荷物があったら呼べよ。」 お揃いの食器、二人で選んだ家具、今日から俺たちは一緒に暮らし始める。 「ああ~あいつまたこんなところに荷物を広げたままにして……まったく、仕方ないな~片づけてやるかぁ~これ、俺が返した椿の花のブローチだ。ふ~あいつ、ずっと持ってたんだな。」 この椿の花のブローチのおかげで、俺たちは小さい頃合ってたことに気づいた。俺がずっと持ってて、今度はあいつが持ってる。んん、何だか不思議な気分だなぁ~綺麗だ。俺が拾った日のままだ。 ---大地も 採り尽すとも 世の中の 尽くし得ぬのもは 恋にしありけり--- 大地には地平線があるが、恋の思いには限りはない。 「え?どっこに行ってたんだよ。ここの片づけ終わってないだろう。どうかしたのか?はぁ~これか。いや、お前まだ椿の花のブローチを持ってたんだなぁって。」 「大切なものだから?そうだな。お前にとっても大切なものだよな。ほら、こち来いよ。ブローチ、俺が付けてやる。綺麗だ。 今日からはそのブローチごとお前を絶対大切にしていく。改めてよろしくな。」