旅装 まぶしいくらゐ 日は 部屋に隅まで さしてゐた 旅から帰つた 僕の心…… ものめづらしく 椅子に凭り 机の傷を撫でてみる 机に風が吹いてゐる それはそのまま 思ひ出だつた 僕は手帖をよみかへす またあたらしく忘れるために その村と別れる汽車を待つ僕に 平野にとほく山なみに  雲がすぢをつけてゐた