浅き春に寄せて 今は 二月 たつたそれだけ あたりには もう春がきこえてゐる だけれども たつたそれだけ 昔むかしの 约束はもうのこらない 今は 二月 たつた一度だけ 梦のなかに ささやいて ひとはゐない だけれども たつた一度だけ そのひとは 私のために ほほゑんだ さう! 花は またひらくであらう さうして鸟は かはらずに啼いて 人びとは春のなかに笑みかはすであらう 今は 二月 雪に面につづいた 私の みだれた足迹……それだけ たつたそれだけ――私には……