故郷见たさに戻ってくれば 春の伊豆路は月おぼろ 墨絵ぼかしの天城を越えて どこへ帰るかどこへ帰るか 夫妇雁 睑とじれば坚気になれと 泣いてすがった洗髪 幼驯染もあの黒潮も 一度ながれりゃ一度ながれりゃ 帰りゃせぬ 逢って行こうか逢わずに行こうか 伊豆の佐太郎忍び笠 どうせ明日はまたながれ旅 はいた草鞋にはいた草鞋に 散る椿