[00:26.405]俺に憑りついてるっていう [00:27.919]カルマによると [00:29.396]俺は人違いで死ぬらしい [00:31.820]冗談じゃねえ。 [00:32.894]そのご指名自体が人違いだぜ [00:36.553]俺がまだずっと [00:37.582]ガキの頃に聞いた話だ [00:39.920]俺の曾祖父さん [00:41.476]いつも通らない道を歩いてて [00:43.831]崖崩れに待ち伏せされて死んだ [00:46.497]あれは人違いみたいなもんだって [00:48.916]近所の爺さんがよく話してた [00:52.064]俺のおじさんは一字違いで [00:54.611]マオイストの活動家ってことで [00:56.327]引っ張られ もう8年連絡がない [00:59.642]今は言わなくなったけど [01:01.406]親父は俺が外に出ようとすると [01:03.774]よくこう言ってた [01:05.526]「決して目立つな。 [01:07.359]カルマにはくれぐれも見つかるな。 [01:09.363]人違いされるな、 [01:10.631]いいな、決して目立つな。 [01:13.096]爺さんと兄貴は [01:14.023]お前と同じ長男だったんだ」 [01:18.141]靴ひもを踏んづけて [01:20.343]前のめりになりながら [01:22.624]俺は表通りに出ていったんだ [01:24.880] [01:45.737]情けなくも無情に [01:46.897]今日も日が暮れてく [01:48.221]西風に乗って寒さが運ばれてくる [01:50.594]カーテンをめくる [01:51.821]東に闇がゆっくりと夕焼けを削る [01:54.513]昼が眠る [01:55.979]輪郭や顔色があいまいな [01:58.055]人目に付かない商売が有利な世界だ [02:00.762]真っ黒い鳥たちが泣き出す [02:02.929]快感と金が騒ぎ出す朝の始まりだ [02:05.834]金貸しを回って疲れ果てたおやじが [02:08.080]離れない影を引きずるのを [02:09.889]屋上から見た [02:10.915]運に恵まれなかった敗者 [02:13.007]生きてるだけマシだって [02:14.124]慰めには俺はもう飽きた [02:15.993]不公平への涙は [02:17.535]まだガキだったころに乾いた [02:19.426]必死に抜け道を探した [02:20.946]すきま風と暮らす生活はまっぴら [02:23.380]相棒のラムとスキーの一派に入った [02:26.176]スキーは俺と同い年の18で [02:28.696]すでに若くして [02:29.554]この通りに立ちはじめ [02:31.358]元締めの娘をたぶらかして [02:33.146]今や4つの交差点の [02:34.583]取引を支配してて [02:36.151]用心深く するがしこい狐 [02:38.752]元締めに忠実で 陰で呼び捨て [02:41.459]ボディーガードを引き連れ [02:42.859]「人生の勝負時が来たら [02:44.509]まったなしだ」が口癖 [02:46.096]俺はタイパウダーと [02:47.629]ブラウンシュガーを扱う [02:48.947]この時期のカトマンズは [02:50.178]好き者が集まる [02:51.305]ドルや円をたくさん持ったお客さん [02:53.934]あんたは特別だから [02:55.005]他の奴からは買うな [02:56.534] [03:06.585]相棒のラムは信用できる奴だ [03:09.020]俺がこの街に [03:09.968]引っ越してきた夜に出会った [03:11.747]奴のシャツは [03:12.652]誕生日に俺がやったやつだ [03:14.135]俺のナイフは奴からもらったやつだ [03:16.749]薄っぺらい壁で貧しさを挟んだ [03:19.020]薄暗いアパートの廊下で [03:20.514]一緒に育った [03:21.913]1本の光がひび割れたガラスから [03:23.938]それを見てよくラムは言った [03:25.624]「カルマに勝つんだ」 [03:26.564]路上は回転する劇場だ [03:29.314]まるで同じ人間の繰り返しの映像だ [03:31.898]うまい話を探し右に左に男が [03:34.598]同じ顔で [03:35.350]きょろきょろうろつく旅行者 [03:36.929]クラクションやスモッグや [03:38.250]落伍者や売り言葉 [03:39.403]気づかれずに逃げる毎日の足音が [03:41.890]似たような時間 似たような速さで [03:44.341]いろんなしがらみに絡まって [03:45.830]のどからからで通り過ぎてく [03:47.813]そびえるレンガの牢獄 [03:49.608]狭い空を呪われた地上からのぞく [03:52.139]現実に戻す 野良犬の声が届く [03:54.525]「ひょっとしてお前 [03:55.616]逃げ出したくなったのか?」 [03:57.220]昨日の日本人は [03:58.319]久しぶりのお人好しだ [03:59.716]シュガー2000/gで喜んでうなずいた [04:02.218]5gで1万、 [04:03.310]スキーに渡すのが1000×5gで5000 [04:06.137]残り5000 [04:07.207]スキーに借りた金が1000 [04:09.091]次の仕入れ分が500×4で2000 [04:11.605]残った2000ルピーチこそこが [04:13.563]俺の儲け [04:14.822]とうていわりに合わねえこの5年 [04:17.206]何万回ここを往復したと思ってる [04:19.788]どれだけ [04:20.496]有害な空気を吸ったと思ってる [04:22.420]どぶネズミは俺を家族だと思ってる [04:24.808]もう地球はここだけとすら思ってる [04:27.353]「道は1つだけ残ってる」 [04:28.963]ラムは思いつめた顔を崩さずに [04:30.936]計画を話し続けた [04:32.851]今日も路上を抜ける風は冷たい [04:35.335]「スキーの金庫の金を盗めば」 [04:37.479] [05:17.952]路上には今日も同業者や客引きや [05:20.795]駆け引きや乞食や体重計り屋 [05:23.190]楽器売りやガキやリッチな外人や [05:25.587]詐欺師や海賊品がひっきりなしだ [05:28.154]つばやほこりや [05:29.259]ゴミが積もったアスファルトは [05:30.741]じっと雨を待ってるかのようだ [05:33.057]この辺で足を洗おうと思ってた男が [05:35.427]最後の仕事で [05:36.559]パクられるのを見たことがある [05:38.281]「スキーの野郎は [05:39.258]明日からポカラに旅行だ [05:40.793]ボディーガードも一緒だ [05:41.955]留守は奴の女 [05:43.294]盗み出したらまっすぐに国境だ [05:45.444]明日の今ごろはインドに密入国だ [05:48.387]いいな、明日だぞ」 [05:49.493]「明日?」 [05:49.903]「そう明日だ」 [05:50.960]「第一その情報は確かか」 [05:52.653]「間違いない」 [05:53.514]笑いながらスキーを真似て [05:54.858]ラムは言った [05:55.662]「人生の勝負時が来たら [05:57.280]まったなしだ」 [05:58.251]巨大な車輪が俺の迷いを乗せて [06:00.709]回りだした [06:01.398]かすかに不吉な予感がした [06:03.403]だが事実、 [06:04.477]チャンスは向こうから来た [06:06.119]俺は残ったパウダーを [06:07.099]全て安くさばいた [06:08.549]寒さに間借りしてるような [06:10.096]部屋に戻った [06:11.197]ここは8才でガンジャを吸う弟や [06:13.662]親父に殴られ [06:14.890]蹴飛ばされたおふくろが [06:16.203]1枚の毛布で眠るこの世の底だ [06:18.471]「神様は等しく俺にも命をくれたが [06:21.186]それだけで [06:21.865]それ以外何もしてはくれない [06:23.502]ついに俺は究極の答えを見つけた」 [06:25.984]親父が叫び壁に向かって狂ってた [06:28.945]「世界はゲットーだ [06:30.333]絶望のベットだ [06:31.517]出口が入り口につながっている [06:33.186]迷路だ [06:33.961]見えないカルマに殺される戦場だ [06:36.205]地図や歴史にも載らない捨て猫だ [06:38.957]路上 最後のシャッターが閉まる音 [06:41.599]娼婦がレストランの窓を覗き込む [06:43.900]客にもらった [06:44.874]治らない風邪にせきこむ [06:46.443]ごほっ ごほっと重く 路上 [06:49.288] [06:58.663]スキーを乗せたロイヤルネパールが [07:00.457]西に飛んでった [07:01.762]空港から奴の女を送り届けた [07:04.012]ルームミラー越し [07:05.221]愛想笑ってる俺は [07:06.662]思わずネックレスや指輪に [07:08.110]目を細めた [07:09.109]路上で儲けた3階建ての豪邸は [07:11.576]今日もバラ色の [07:12.759]あったかさが灯ってた [07:14.446]俺はいつものように [07:15.231]部屋に上がり込んでた [07:16.363]忠実な犬が裏切るとは [07:17.978]誰も思ってない [07:19.512]金はベッドルームの金庫にある [07:21.837]ドルキャッシュ [07:22.626]スキーが吸う分のクリスタル [07:24.465]暗証番号は [07:25.421]のん気にチャラスを吸ってやがる [07:27.160]目の前の女の誕生日の逆 [07:29.279]帰り際にドアの鍵はいただいた [07:31.564]「またすぐくるからよ」と [07:33.102]小さくつぶやいた [07:34.339]街には夕闇が居座りだしたが [07:36.267]俺の道だけは [07:37.110]全く狭くも暗くもなしだ [07:39.156]残ったマッシュルームを [07:40.481]全て金に替えた [07:41.833]ラムといつもの角に待ち合わせた [07:44.222]ネパール最後の夜 冷たい冬の雨が [07:46.873]路上から全ての生き物を追い立てた [07:49.431]飯はそれぞれの家へ帰って食べた [07:51.842]やせたおふくろが [07:52.926]冷めたダルと待ってた [07:54.410]今の苦しみは前世の罪のためだ [07:56.867]そして来世のためだ [07:58.004]そう目は語ってた [07:59.488]路上 あきらめきれない表情 [08:02.355]笑わない妹 落ちない泥 [08:05.179]弱者で満載の水が漏るボート [08:07.490]空腹の象徴 路上 [08:10.412] [08:50.151]希望の扉をラムが開けてく [08:52.553]スキーの女は [08:53.813]1階のラウンジで寝てる [08:55.235]2階へあがり [08:56.335]ベッドルームの壁に埋めてる [08:58.151]金庫の前まで一気に息を止めてく [09:00.374]ダイヤルをラムが4回回す間 [09:02.732]今 神が俺達を選んでると感じた [09:05.324]最後の沈黙の後 遂に金庫は開いた [09:09.308]突然「なんだこの光は」 [09:10.766]ふりかえるとスキーの女がいた [09:12.805]女が声を出す [09:14.067]そして俺はナイフを出す [09:15.531]3秒女は悲鳴をまき散らした [09:17.772]俺は左手で顔を押さえて [09:19.559]喉元を刺した [09:20.519]我に返るまで5分を費やした [09:22.834]この部屋で生きてるのは [09:24.076]俺とラムの二人だ [09:25.242]血まみれのシャツを捨てて [09:26.697]スキーのジャケットを借りた [09:27.970]スキーのジャガーで [09:29.249]アップタウンを抜け出した [09:30.631]インド国境が近い [09:32.225]ビールガンジ目指し [09:33.479]一路南 栄光のゴールは近い [09:35.605]ラムは言った [09:36.386]「最後にあの通りを見たい」 [09:38.231]俺も同じことを思ってたと [09:39.819]ハンドルを左に [09:41.018]霧を吸って嘆きをはく路上 [09:43.327]両脇に一生閉じこめられた捕虜 [09:45.876]俺は確かに聞いたんだ [09:47.435]誰かの寝言を [09:48.619]「頼むから [09:49.138]俺も連れてってくれよ」と [09:50.815]助手席のラムは [09:51.988]振り返っていつまでも見てた [09:53.381]「ラム 俺達はこれからの人間だ」 [09:55.747]いつの間にか [09:56.698]カトマンズは遠くに見えた [09:58.802]カルマは遂に振り切ったかにみえた [10:01.083] [10:21.415]遂に 遂に [10:22.274]振り切ったかにみえても [10:23.821]カルマ特別委員会は追いかけてくる [10:26.379]逃げたって隠れたって無駄だな [10:28.877]太陽と月だって奴らの味方だ [10:31.432]遂に 遂に [10:32.538]振り切ったかにみえても [10:34.078]カルマ特別委員会は追いかけてくる [10:36.460]逃げたって隠れたって無駄だな [10:38.704]太陽と月だって奴らの味方だ [10:41.642]ビムフェディ近くのケチな検問 [10:44.054]警官の一人がジャガーと [10:45.437]ジャケットを見つめると [10:47.981]いきなりこう言った [10:49.588]「おまえ スキーレゃねえか?知ってるぞ。おい、こいつ タメルのスキーだ。あの、ヘロインの...このジャガー...間違いない」 [11:08.367]「正義ってもんを 見せてやる」 [11:11.951]俺は人違いで死ぬらしい··· [11:15.205]「おい! そこを動くな!」 [11:19.202]「待て!車から降りろ!」 [11:22.833]「逃げられると思うなよ」 [11:24.559]「動くな!」 [11:39.549]「撃つな もう撃つな」 [11:42.226]