天野月子 菩提樹 ごまかさないで あなたに落ちる冷たい雨を嗅ぎ分けて 両手を空に翳しているから あなたに咲く菩提樹 軽はずみなふり いたずらにからかい游んでいるあなた わたしは手探りしながらあなたを想う 飛び立つ鳥のように 孤獨と孤高に揺れる背中 わたしはここで待つ ただの止まり木でしかない ごまかさないで あなたに落ちる冷たい雨を嗅ぎ分けて 両手を空に翳しているから あなたに咲く菩提樹 もたれかかりまた遠のいていく 冷めるあなたの體溫 わたしはどれほどの強さを纏えばいい 夢の先はもっと過酷で あなたの胸を貫く わたしはここにいる永くあなたの傍らに もう迷わないで あなたに刺さる銳い棘を抜き取って その傷口を抱いていてあげる あなたが笑う日まで どうか あなたが壊れてしまうのならば どうか この體を燃やしてほしい そしてまた 灰となってあなたを包み込む 募る 募る 募る 想いの數 もうごまかさないで あなたに落ちる冷たい雨を嗅ぎ分けて 両手を空に翳しているから あなたに咲く菩提樹 もう迷わないで あなたに刺さる銳い棘を抜き取って その傷口を抱いていてあげる あなたが笑う日まで