これはこの世のことならず 賽の河原の物語 親にはぐれた嬰児の 人のあはれと泣き止まぬ 現世の唄を乗せて 廻向の風が吹きつける 一つ積んでは父のため 二つ積んでは母のため 三つ積んでは人のため Om それはあの世のことなれば 賽の河原に鬼ぞ住む 死出の山路は暮れなずみ 子取ろ子取ろと羽虫鳴〈 現身の涙で出来た 輪廻の河が打ち寄せる 一つ積んでは父のため 二つ積んでは母のため 三つ積んでは人のため Om 右も左も分からぬ 霧と硫黄の荒野を 鬼に追われて子供は逃げる 石を蹴散らしどこに行くのだろう 遊び疲れた子供は 石の蒲団にくるまり 水に香まれて湖の底 醒めることない夢を見るのだろう 賽の河原に積んでは崩れる 賽の河原に積んでは崩れる