透明でキラキラした子猫の 前で立ち止まった君のために 「とってやる」 そう言ったけど 狙う手が震えている 藍色の浴衣のせいなのか 君がいつもより遠く感じるよ もっと近く 少しでも近く 僕は必死に的へ腕を伸ばす 喜ぶ顔 一瞬でも一人占めに出来んなら 何でもやれる 伝えられる 「君が好きだ」って コルクは子猫かすめていく すんでのところをかすめていく あともちょっと あともちょっと もうちょっとなんだ 君の笑顔まで 隣のもんを倒していく 手前のもんまで倒していく それじゃない それじゃないんだ 欲しいのは不安そうな 君を映し出す 子猫だ 「もういいよ」君はポツリと言った いつの間にか人足はまばらで 仕方なく あの子猫に 背中向け歩き出した 「ありがとう」君は微笑んで言った 鳥居の下で僕は足を止めた 「ちょっと待ってて」そう言って僕は 子猫んとこに走っていた 僕は何度 あいつの目を見つめたんだろう? この思いを 託宣のは あいつしかいない 子猫はまだその場所にいた 小さな目で僕を見つめてた 最後なんだ 最後なんだ 息を吸って 指をかけた コルクは子猫へ向かっていく まっすぐ子猫へと向かっていく ちょっと逸れて 尻尾に当たって ぐらついた子猫は ゆっくりと倒れた おわり