あれは麻疹で早退けした午後 母の背中で少し眠った ゆるい坂道 降りきった頃に どこか泣きたい気持ちになった ぼんやり開けた目に いっぱいのベニトンボ 大事なひと時 悼むように 紅く紅く燃えて 夕焼けへと 溶けていったね 37度6分を持て余した部屋 小さな残像 息をしている ひとりの生活も 苦になんてならないと それでも記憶の片隅には 紅く紅く染まる 一枚の絵 変わることなく 終わり