第九巻 527ページ 《 Chronicle 2nd 》 Vol.07 聖戦と死神第一部「銀色の死神」~戦場を駈ける者~ プロイツェン領ッフェンブルグ 眩暈がする程の血の雨の薫に咽ぶ ことなくその男は笑っていた フランドル暦182年『アラゴンの戦い アルヴァレス將軍率いる フランドル軍五千 ピレネー山脈を越え カスティリヤ領に アラゴン平原にて カスティリヤ軍 北方防衛駐留部隊一萬二千を相手に開戦 勇み歩を進める毎に 足元に死が絡みつく 研ぎ澄まされてゆく刃風(かぜ)に 敵兵は戦意(こころ)惑わす 猛る兵士と軍馬の嘶き 我に続け 白銀の甲冑… <ベルガ人の將軍>(アルベルジュ ──時は來た、見よ!ベルガの死神だ ──時は來た、見よ!ベルガの死神だ ──時は來た、見よ!ベルガの死神だ ──時は來た、見よ!ベルガの死神だ 「時に…アルヴァレス卿の軍はまた勝利を収めたようですな 倍數以上の敵軍を完膚なきまでに叩きのめしての大勝利とか 「…銀色の死神、忌々しい<ベルガの亡霊>(アルベルジュ)め 今や陛下よりも奴を崇拝する者まで出始めておる始末」 「丁度良い手駒もあることで御座いますし、機を見ていづれ 目障りな英雄殿には、ご退場願うのが宜しいかと 「手駒…ああプロイツェンで捕虜にしたあの男の事か …破滅を演じる歴史の舞臺、今宵も面白い劇が観れそうだ 「我ら<唯一神>(クロニカ)の名の下に 彼は誰が為に戦場を駈けるのか 護るべき女性(ひと)と祖國(くに)を失って尚… END