[00:00.000] 作曲 : Ryoma Maeda [05:08.953]まだ4月なのに、 [05:11.575]タンクトップの外国人が、 [05:14.445]15秒の赤信号に腹を立て、 [05:17.829]イヤフォンを投げ捨てる。 [05:21.746]アスファルトの上に、 [05:26.446]だらしないロックンロールがこぼれる。 [05:28.543]僕はそれらを拾い集め、 [05:31.977]公園のカラスに喰わせる。 [05:35.897]まだ戦争の傷跡が色濃く残るこの街で、 [05:41.680]そこは唯一、不発弾のない場所だから、 [05:45.349]くちばしに音の欠片をくわえたカラスが歌う、 [05:50.306]だらしのないメロディに合わせて、 [05:53.439]僕はダンスを踊る。 [05:56.842]街の向こうで誰かが叫んでる。 [06:01.800]どうやら疫病が発生したらしい。 [06:08.038]通りを戦車が走り抜ける。 [06:12.243]その地響きが、新しいリズムを生みだす。 [06:17.500]僕のステップが加速する。 [06:21.926]もし僕が、いわゆる神様だったら、 [06:26.370]こんな街、すぐにでも海の底に沈めてしまうのに。 [06:32.404]そして沈めたらすぐに後悔して、 [06:36.601]おいおいと涙を流す。 [06:40.775]そしたらその涙が、また新たな海を作りだして、 [06:45.758]また、この街を沈める。 [06:49.951]そして僕は、 [06:51.519]その時になって初めて、 [06:54.636]自由という言葉の、本当の意味を知るだろう。 [07:00.678] [07:03.780]そしたら目が覚めた。 [07:06.120]全部夢だった。 [07:09.278]おののいてしまう。 [07:11.909]そのあっけない結末に。 [07:15.810]窓の外で鳥がいななく。 [07:19.720]朝のラジオがロックンロールをがなりたてる。 [07:28.983]僕は慌てて起き上がり、 [07:29.758]ベッドの下を覗き込む。 [07:31.585]不発弾なんて出てこない。 [07:36.561]惨めで明るい未来が、埃をかぶっている。 [07:38.931] [07:42.339]見覚えのある、いつもの朝の、 [07:45.763]いつもの7時20分、 [07:49.178]『おはよう、子供たち!』 [07:53.631]ラジオでタンクトップの外国人が、 [07:56.769]そう、がなりたてている。