作曲 : Ryoma Maeda まだ4月なのに、 タンクトップの外国人が、 15秒の赤信号に腹を立て、 イヤフォンを投げ捨てる。 アスファルトの上に、 だらしないロックンロールがこぼれる。 僕はそれらを拾い集め、 公園のカラスに喰わせる。 まだ戦争の傷跡が色濃く残るこの街で、 そこは唯一、不発弾のない場所だから、 くちばしに音の欠片をくわえたカラスが歌う、 だらしのないメロディに合わせて、 僕はダンスを踊る。 街の向こうで誰かが叫んでる。 どうやら疫病が発生したらしい。 通りを戦車が走り抜ける。 その地響きが、新しいリズムを生みだす。 僕のステップが加速する。 もし僕が、いわゆる神様だったら、 こんな街、すぐにでも海の底に沈めてしまうのに。 そして沈めたらすぐに後悔して、 おいおいと涙を流す。 そしたらその涙が、また新たな海を作りだして、 また、この街を沈める。 そして僕は、 その時になって初めて、 自由という言葉の、本当の意味を知るだろう。 そしたら目が覚めた。 全部夢だった。 おののいてしまう。 そのあっけない結末に。 窓の外で鳥がいななく。 朝のラジオがロックンロールをがなりたてる。 僕は慌てて起き上がり、 ベッドの下を覗き込む。 不発弾なんて出てこない。 惨めで明るい未来が、埃をかぶっている。 見覚えのある、いつもの朝の、 いつもの7時20分、 『おはよう、子供たち!』 ラジオでタンクトップの外国人が、 そう、がなりたてている。