方違(たが)えしても無駄ぞ この道は我が物 渦巻きの袋小路 禍いが待つ 場処(ばしょ) どうしても山に入るか それならば やむなし! 絡まる赤き糸の先 小指などは無し 太(ふと)き枝から下がるは そなたの首よ ほころぶ花のかんばせは  縊(くび)るための罠 後をつけてきたらば それが 宿命(さだめ) 歩くほど迫り来るは 人型の紙吹雪 叫べども弱き声は  嗄(か)れ果てど届かぬ! くるくるり流れ ゆらりゆらりゆられ 鳥も獣もみな逃げた 最涯(さいはて)の森で 痩せこけたおのれの身ひとつ抱えて ぐるりを見渡してみれば 樹(き)より他は無し 掌(て)に握り締めたるは 赤き糸よ