紫の上「連れてってくださらないの 寂しげなその海岸へ」 源氏「長いことかかるようなら 岩屋でもあなたを呼ぼう」 紫の上「でも謹慎の旅だから 私がいると邪魔なのね」 源氏「頬はこけ やつれてしまった 身体こそ遠く離れても 鏡に映る自分のように 二人は一心同体のはず」 紫の上「手鏡に残像残していって 覗けばいつでも逢えるように」 (间奏) 須磨の浜 ひとり眠れず 四方(しほう)から吹く風を聴く 打ち寄せる幻の波 泣き濡れた枕が浮かぶ 琴の弦 爪弾く音色 哀しくて途中で止めた 都から吹く風のせい 従者まで起きてみな泣く 須磨浜の海鳴りを 絵筆をとって描くたび 透明な青さだけ 手から心に染み込んでいく