× × × 「もう後夜祭も終わって、みんな帰っちゃったみたいだね!」 「確かに、後片付けって感じだな。後夜祭、このライブハウスでやってたのか?」 「そうそう」 「あ、でもステージはそのままで残ってるよ」 「そりゃ、わたしがわざわざ言って残しておいてもらってたからね!」 「姉さん、これどうしたの?」 「ん?昔よくここで遊んでたからね。その伝手で」 「うん、楽器のセッティングも問題なし。ほら、あなたたちのステージだよ」 「ここまでやられたら、やるしかないな……。私、ガンバっ!」 「なぜ私まで……」 「おやおや、比企谷くんに見られていると緊張してできないかな?」 「何を言っているのかしら。あんなに緊張感のない顔をした男もそうそういないでしょう。 あれを見たら緊張なんてするわけがないわ」 「そう。まぁ、確かに緊張解してくれるよね、あの子は」 「何か他意を感じる言い方ね……」 「まあまあ、いいから準備しちゃおうよ、雪乃ちゃん」 「そんなに引っ張らなくても行くわ、はぁ……」 「わあ、なんかドキドキしてきたね。ライブの始まる前の雰囲気ってすごい独特だなぁ……」 「ですね!静かなのに、だんだん気分が盛り上がって行くのが不思議です」 「ふむ!ライブは最高だな。我もライブ大好き愛してる!ラブライブ! 誰ぞある!誰ぞ我がライブコマンダーとサイリウム一式を持てぃ!」 「装備がガチすぎるだろ……」 「せ、閃ブレの長さ規定は、ありますか!?」 「知らねぇよ……運営に聞け」 「お、八幡?どうした?どこへ行くのだー?」 「映画でもなんでも、一番後ろで観るって決めてるんだよ」 「ヒッキー」 「由比ケ浜か。どうした、お前は準備しなくていいのか?」 「あ、うん、あたし、楽器弾かないし。 あ、あのさ、ヒッキー、文化祭のステージ、ちゃんと見てないって言ったよね……」 「ん?ああ」 「そっか……。……今度は、ちゃんと見ててね」 「ま、もうここまで来たら見てない振りもできないだろうしな……。ちゃんと見てるよ」 「うん……。あ、あたしもね、ちゃんと……、ちゃんと見てるから!」 「……あ、おい。……言い逃げはずるいだろ」 × × × 「お待たせー!あ。ゆきのん、あたし歌詞うる覚えのままなんだけど」 「それを言うならうろ覚えよ」 「ガハマちゃん、だいじょぶだいじょぶ。雪乃ちゃんも歌ってくれるし」 「そう思っているなら大間違いよ。いつもいつも手を貸していたら本人のためにならないもの」 「まぁまぁ、二人で歌えばいいじゃないか。雪ノ下、由比ケ浜。 派手にかましてやれ、客席の一番後ろまで届くくらいにな」 「はぁ……」 「……はい!」 「あ、準備できたみたいだね」 「いえー!待ってましたー!」