Color 3 内緒話 フランク:着替え 終わりましたか わあ やっぱりぴったりでしたね そうやって姫様のドレスを着ると ますます本物らしく見えますよ 世界には自分に似た人が三人はいるって聞いたことがありますけど いや 本当にそっくりだなぁ あと そういえば 自己紹介がまだでしたね 僕は姫様のフットマン お世話係のフランクと申します 姫様が戻るまでの間 あなたのお世話を担当します どうぞよろしくお願いします では こちらへどうぞ さて それじゃ自由になさっててくださいね あははは そんなに硬くならないでいいですよ ここには事情を知っている僕たちしかいませんから おっ バトラーは隣の部屋にいますよ エスピーたちと連絡を取っているところです さっきあなたを連れてきたエスピーのニコラスは ドアの外で控えています ここにいれば安全ですから ゆっくりなさってください あと そっか 僕が一緒にいると余計に緊張してしまいますか それなら 僕もほかの部屋に行ってますけど ああ いってもいいですか よかった いえ ちょっと話相手がほしいなって思ってたんですよ こんなことになって 愚痴の一つや二つこぼしたくなるってもんです あっ 話聞いてもらっていいですか はは ありがとうございます でも ここで話したことは内緒にしててくださいね 特に 姫様には内緒でお願いします ああ どうぞ あなたも座ってください えっ ドレスがしわになる そんなこと気にしないで大丈夫ですよ 姫様はそのドレスで走り回ったりしますからね 本当ですって 僕 ずっとこの仕事に憧れってたんですよ お世話係の仕事です だから 王室の方のお世話ができる事になってうれしかったですよ 姫様のお世話をするのは大変ですけど やりがいがあります 姫様の無茶っぷりは今に始まったことじゃないですし もう慣れました だけど今日の脱走騒ぎにはさすがに驚かされましたね ああ 姫様のお気持ちがわからないわけじゃないですよ 今回の親善外交は 初めて国を代表しての公務ってことで 姫様にはものすごいプレッシャーがかかっていましたから 王族として失態は許されませんし 訪日してからは 毎日分刻みのスケジュールをこなされて ええ なかなか自由な時間は取れませんね 姫様がおひとりになれる時間なんて たぶん夜眠るときくらいじゃないですか 常に人の目に晒されていますから 一瞬たりとも気は抜けませんし それはもちろん姫様に限ったことではなく 僕らも同じことです 現実は 甘くはないですね やっぱり 思い通りにいかない事なんてしょっちゅうです 姫様もあんまり疲れや弱みをお見せになる方ではありませんが ほんとはきっとご苦労をなさっていたんだと思います だから姫様が自由になりたいって衝動的に抜けだしたくなるのもわかります でも 納得がいかないんです どうしてたったおひとりで行ってしまうんでしょう うん 考えるだけで胃が痛いですよ ほんと まあ ここで気を揉んでいても仕方ないですし 今僕ができる精一杯のことをしますよ ここであなたと一緒にしっかりと留守番をするってことです もちろん姫様が戻ってきたら文句の一つや二つは言わせてもらいますけれど なんで僕を連れてってくれないんですか 僕だって観光したかったのに我慢してたんですよって あなたまで巻き込んでしまって申し訳ないと思ってます でも協力してくれてほんとに助かりました 感謝してます 今特に大事な時期なので ですから 今僕の使える方はあなたです 御用がありましたら 何なりとお申し付けくださいね