嘘でもいい 頭上を掠める桜の花びら、ひらりひらりと舞い降りては地面をピンク色に染めていく。とうとう卒業式の日になってしまった。僕の手にもしっかりと卒業証書が握ぎられている。今日で最後…お別れを言わないと… 「ねぇ、友達とのお別れが済んだ?次は僕と話さない?よかった。すこし歩こうか?」 「桜、綺麗だね~まるで今日という日を祝ってるみたい。ああ~卒業までに君と付き合いたかったな。フフ、冗談だよ。ねぇ、一緒に桜の木の下で写真取ろうよ。恥ずかしい?じゃあ、こうしたらもっと恥ずかしい?ほら、あっち。友達がカメラで撮ってくれるから。お姫様抱っこが怖い?大丈夫大丈夫~僕がちゃんと抱きしめるから。はい、笑って。」 「卒業しても君に会いたいな~いまよりももっと大人になって考え方も変わって…それでも友達でいたい。」 友達。その言葉が僕の心の奥に引っかかった。少し恥ずかしそうに頷く彼女を見ると、また胸が痛くなった。 『浅茅原小野に標結ふ空言も逢はむと聞こせ恋の慰に』 僕に「また会いたい」と言って。嘘でもいいから。その言葉を聴くだけで、幸せな気持ちになれる気がする。 これは…恋じゃない。本気の恋をしたことのない僕に、君は眩しすぎる。