会いたい人 「ただいま~はぁ、疲れた~」 「眩しい…朝の太陽って、こんなに眩しいものだったっけ?学生の頃はよく朝起きられてたなぁ~」 卒業してもう何週間経ったんだろう。学生の時とは違う生活のリズムに正直僕は疲れきっていた。毎日忙しく時間に追われ、気づくと仕事場に徹夜で籠もっていることもある。窓際に置かれた写真たて、そこには卒業式に撮った二人の写真が飾られている。色褪せることなく、いまでもあの日の美しい桜を映し出している。 「桜の花が映ってる。もうどれくらい会ってないっけ?会いたいなぁ~話したいことたくさんあるよ。」 でも、それは友達として、恋とか愛ではなく…ただ友人として彼女が心配なだけ。 本当の恋なんて、面倒だ。好きと言ってくれる女の子はたくさんいる。それなりにデートして、楽しく過ごして…向こうが分かれようって言ったら、分かれる。その繰り返し。寂しくもなかったし、悲しくもなかった。恋愛なんて、遊びのようなものだと思っていたから。でも…いまは会いたい人がいる。会ったら真っ先に抱きしめたい。彼女の笑顔を見たい。もしこの思いに名前を付けるとしたら…これが、「恋」なのか? 「早く寝よう。少し寝たらまた出勤だ。」 『験なき恋をもするか夕されば人の手まきて寝らむ児ゆゑに』 夜が来れば、彼女は僕以外の誰かに抱かれて眠るのだろうか。こんなに僕は思っているのに… もし、彼女への思いが本物ならば…これはきっと、初恋だろう。