わたしが住んでいるアパートは 坂の途中にある 雨が降る日 坂をすべって行く車 わたしの部屋の前を通り過ぎた途端に 車の音は ふっと消えてしまう こうして煙草を喫かして 壁を見つめていると どうやら わたしはセンチメンタルになってくるらしい その夜も遅く坂を戻って来た ふと見ると部屋に明かりが点いていた なんだか嬉しくなって立ち止まったが わたしにはわかっていた あれは消し忘れだってね 或る日 まだ雨が降って わたしは坂を下りて行く そして、部屋の前を通り過ぎて行く