「今はもう昔の…」と 御定まりの口上で奏(うた)う 傾城(けいせい)が華と呼ばれし妓(ひと)の唄 艶(あで)に三味ひとつ 「あれ見やれ」と太夫の 道中誰ぞの声がすりゃ 黒山は傾城が簪(かんざし)の 揺れるを聞くが為 今宵 一切り千両 高嶺の華なるに 見合う夢なれば もっと近う寄りや 誰と思(おぼ)しかや 衣(きぬ)やるゆえ 人形(やや)と遊ばれませ 絢爛なる街で傾城はたおやかに笑う そは誰(た)が為何が為 阿弥陀さんさえ知る由(よし)もなし 流言(りゅうげん)嗫かる 傾城小指交わせし男(ひと)ありと 身請けに首振らずは 其(そ)が約束(まぼろし)を追う為という 幾夜 夢に花売れど 汝を手折(たお)らせや 忘れ路の君よ 早(はよ)う後宮入(ちこうよ)りや 欲しと思(おぼ)すなら 領地(くに)やるゆえ 小指(あかし)くだしゃりませ 傾城の幸せをいったい誰ぞが決める? 現実(まこと)か約束(まぼろし)か 阿弥陀さんさえ知る由もなし 笑みの裏に隠す傾城が素顔誰ぞ知るや 絢爛なる街で華呗うは今や三味ひとつ