[00:00.000] 作词 : 戸川純 [00:01.000] 作曲 : 戸田誠司 [00:12.001] [00:17.054] (鈍い音がして [00:19.042] 私は我に返った [00:21.583] その前の記憶がない [00:25.646] 混沌と焦燥の中で立ち尽くす私の右手は [00:30.558] ずしりとした鈍器を握りしめていた [00:34.857] 足もとに目をやると 可笑しい位説明的に [00:39.416] 彼が後頭部から 赤黒い血を流しながら [00:43.371] 瞳孔を開いて 床に倒れていた [00:49.569] その瞬間 私の記憶がくるくると [00:53.546] ビデオの早い巻き戻しの様に 戻り始めた [00:57.457] そして [00:58.640] あるひとつのシ一ンが私の脳裏に再生された) [01:02.620] [01:04.361] 哀しい現実的な声 [01:09.872] クリアな声で [01:12.298] 彼が最期にのこした言葉 [01:17.962] 「別れてくれないか」 [01:20.866] [01:23.333] (単純な 呆れる程単純な [01:26.716] 表現としては あまりにも稚拙な一節 [01:29.613] が 私にとって非常に残念だったのは [01:32.771] それが 単なる表現のみを [01:34.694] 目的とされたものではなかったことだ [01:39.395] 私がもう少し 冷静であれたなら [01:41.818] 話し合いも出来ただろう [01:43.892] いたらなかったところは [01:44.910] 直すから 別れないで欲しい [01:47.116] 私に生理的嫌悪感を いつのまにか [01:49.473] 感じるようになったということなら [01:51.729] やむを得ない といったところか [01:55.082] しかし 実際は彼の言葉を聞いたときに [01:58.721] いきなり 強いパルスというか [02:00.538] 電気的なものが 身体中を走って [02:02.632] 衝動のみにつき動かされる私が [02:04.787] そこにいただけだ [02:06.159] 私はやっと後悔に辿りついた [02:08.791] 好きだったから) [02:09.733] [02:10.234] 丸く開いた彼の瞼を [02:15.936] ごめんねって閉じて [02:18.318] 汚れた身体を拭き [02:22.308] きれいなシャツに [02:24.909] 着替えさせて [02:28.263] 陥没した頭部に [02:31.825] 泣きながらごめんねって [02:36.253] 何度もキスをしたの [02:40.050] 唇を [02:41.864] 血まみれにしながら [02:45.435] [02:54.713] (そのとき 私の腹部を 内側から [03:00.354] 小さな力で 小さな足が蹴った [03:05.297] 七ヶ月になる 彼と私の子である [03:11.320] 私は何とか冷静になろうと努め [03:14.156] ひとつの答えを出した [03:16.347] 殺人者の子と呼ばれる [03:17.941] この子の生涯を考えれば [03:19.926] 私は極刑を与えられるか [03:22.131] 今この場で自害するべきだ [03:24.807] おなかの子と一緒に [03:27.516] しかし何だろう [03:28.886] 「エゴ」や「自己逃避」という言葉と共に [03:31.489] 何だろう ある強固なひとつの意志が [03:33.960] 急に頭をもたげ始めたのだ [03:36.113] 人類がその血を絶やさない為に [03:38.281] 人間に 女性に与えられた大自然のちから……!) [03:41.633] [03:42.201] 賢い いい子のはず [03:46.226] やさしい [03:47.912] あの人の子だもの [03:50.168] 一生懸命そう育てよう [03:56.207] かわいいよう [04:00.250] どんなことがあっても [04:04.219] きっと守ってあげなくちゃ [04:08.163] 漲る力と自信 たぶん [04:13.777] そう これは本能 [04:16.068] もう人をあやめずに [04:19.840] 冷静に [04:21.865] 逃げ延びて生きるわ [04:24.116] あの人に誓って [04:27.691] 抱きしめよう [04:29.939] 大地を踏みしめて [04:33.331] [04:35.031] (やがてこの子が独り立ちし [04:38.374] 私が最低限の義務は果たせたと思う頃 [04:42.566] やっと私は本来の刑を [04:44.458] 自分に処することが出来るだろう [04:47.273] ひっそり 静かに 樹海に入ろう [04:51.038] 自害より 行方不明の方が [04:52.938] この子にとってましだと思うから [04:58.332] その後 ことの顛末を この子が知る日が来ても [05:02.429] きっと慈悲深く動じない [05:05.231] そんな子に…… [05:06.690] それまで頑張らなくちゃ!!)