一本歯の下駄をからころと鳴らす レンズを取り替えて夏の空 ワイシャツの上から篠懸を羽織る ペンを構えては旅の空 きっと荒れるだろうな もっと高鳴るくらい そっと目を閉じたときに ふっとにおいでわかる 雨だわ 黒い羽根を縁どるよに雨粒が伝う 前髪をかき上げては しずくの数を余計に確かめた 空高く雲は 雷を湛えたまま奔る いつの間にか震える この体を抱きしめて そっと引き金を絞る 一張羅の頭襟 整えて結ぶ レンズは望遠で夏の空 天狗の団扇にはフサフサの飾り インクは青がいい 旅の空 やっと突きとめたから もっと知りたくなるの だって研ぎ澄まされて じっとしていられない 風には 言葉がある 羽根をもつ者にだけ聞こえる 遠く見渡す世界には まだ綴られぬ語り部がいるはず 空高く雲は 山雨の予感を放さない いつの間にか消えてしまう 言葉を書き付けて そっとペンを滑らせる 雨なら 羽根に森に 縁どられたよに翠の影 張り付いたシャツを剥がして しずくの数を余計に確かめた 空高く雲は 雷をあやしながら歌う いつの間にか応える この体を抱きしめて そっと引き金を絞る