あたしは家族を失った土地を捨て ひとり海へ 一艘の舟を勝手に借りて漕ぎ出した 波が荒れ 死ぬかと思った 気が付けば海賊船の上で 義手をかざす海賊が 「あんな舟じゃ自殺行為だ 海も狂ってきてる なんなら陸まで送ろう」 嫌だ!あんな忌まわしい場所など 二度と帰るもんか ここで働からせてくれませんでしょうか! 海賊船はどんな波にも負けない 揺るがない その厨房で食事係を任された 何人居るんだ? どれだけ作れば 連中はお腹が膨れるのか 義手を愛でる海賊は海賊団の頭で みんなに慕われていた 海賊なんて名乗って 格好だけつけてる優しい人 あたしもよく可愛がられた でも奴らは船を見つけると 容赦なく襲い始めたんだ 返り血浴びた奴らが食料抱え戻ってきた 仲間になれたと思ってたのに 泣きながら 操舵室に駆け込み舵取り船を走らせた 岩壁に向け 義手の冷たい手のひらが あたしの頬を叩いていた 「生きるための犠牲だ」 でもそれは不公平だ 弱い者いじめだと言うと 「じゃあこれでどうだ」と服を脱ぎ捨てた その体の半分はぼろぼろの鉄で出来てた 「俺も弱い者だ なあこれからはひとりで やってこうと思うんだが この様だ…連れが必要だ ちょうどいい おまえが ついてきてくれないか」 ふたりを乗せた小さめの 船がゆっくり沖へと進んでく 朝の光へと