何もない。 見えない。 今日も降りしきるのは、 笑えない心に彷徨う終わらない雨―――。 雨を着た街角から傘の花が咲き出せば、 暗いアパートにあの日の僕を探していた。 雨を着た路地裏では傘の花が咲き違う。 目に映る風景に、只、立ち尽くし、 影もない懐かしさを抱きしめた。 空き地を背にして気怠い僕は見上げてみた。 やけに雨音がうるさいね。」 篠突く雨が僕の代わりに泣いてくれる。 独りじゃ涙も流せなくなった。 移りゆく季節は街を変える。 好きだった雨の匂い。 仄めいた電線の道。 濡れ描く面影にさよなら。 当たり前な雨の日の、 ありふれた答だった。 冷たい雨のあとで―――。 あの日の悲しみを僕にくれないか? 無くした思い出を僕にくれないか? 打ち拉がれていた日々に会えるなら、 僕が僕になれた意味をくれないか? 移りゆく季節は僕も変える。 嬉しいこと。 悲しいこと。 何気ない沢山のこと。 新しい明日にさよなら。 当たり前な雨の日の、 ありふれた答だった。 冷たい雨のあとで―――。 何もない。 見えない。 今日も降りしきるだけ。 終わらない雨は音も無く佇んでいる。 誰もがきっとこの見えない雨の中を、 途方に暮れて、それでも歩いていくのでしょう。 ずっと―――。