前文 けさ、学校へ来る途中、村松先生にお会いしました。 村松先生は毎朝六時ごろお目覚めになります。 起きられてから新聞をお読みになったり、ラジオをお聞きになったりしますが、朝はお忙しいので、 新聞は簡単に目を通されるだけで、ラジオは天気予報とニュースを聞かれるぐらいだそうです。 七時ちょっと前に家を出られます。 学校へは地下鉄とスクールバスでご出勤になるけれども、途中、乗り換えなければならないので、とても不便です。 村松先生は今日の授業で、日本語の敬語についていろいろ教えてくださいました。 午後、私は教員室に先生をお訪ねし、『日本語ジャーナル』という雑誌をお借りしようと思いました。 この雑誌には、先生が書かれた『敬語の使い方』という文章が載っています。 私はそれを読みたかったのです。 会話 (学校へ来る途中で) 李:先生、おはようございます。 村松:李さん、おはよう。 李:先生はいつもこの時間にご出勤なさいますか。 村松:ええ、いつもこの時間に学校へ来ます。 李:先生は毎朝何時にお目覚めになりますか。 村松:毎朝六時ごろ起きます。 李:お早いですね。 村松:起きてから、どんなに忙しくても、中国の太極拳を十分間ほどやります。 李:それで先生はご丈夫なのですね。先生はご出勤の前に新聞をお読みになりますか。 村松:時間がないので、簡単に目を通すだけです。 重要な記事は学校から帰ってじっくり読むことにしています。 李:先生のお宅は何という新聞をお取りになっていますか。 村松:わたしのうちでは、「人民日報」と「チャイナーデーリー」を取っています。 李:朝、ラジオをお聞きになりますか。 村松:支度をしなければなりませんから、聞くのは天気予報とニュースぐらいです。 李:何時ごろお宅を出られますか。 村松:七時ちょっと前にうちを出ます。 李:それでは、朝はお忙しいですね。 村松:ええ、朝はとても忙しいですよ。 李:学校へは何にお乗りになってご出勤なさいますか。 村松:地下鉄とスクールバスで来ます。 李:どこでお乗りになりますか。 村松:家の近くで地下鉄に乗ります。 李:スクールバスにお乗り換えですか。 村松:ええ、スクールバスに乗り換えなければならないので、とても不便です。 李:ちょうど出勤時間ですから、朝の地下鉄はたいへん込むでしょうね。 村松:ええ、電車がいつも満員で身動きもできません。それに押されたり、足を踏まれたりしてさんざんです。 李:それはたいへんですね。先生はご出勤のたびに切符をお買いになりますか。 村松:いいえ、交通カードを持っていますから。 李:お宅を七時ちょっと前に出られると、何時ごろ学校にお着きになりますか。 村松:地下鉄とスクールバスに乗っている時間があわせて四十分ほどですから、学校に着くのは八時十分まえです。 李:先生は遅刻なさいませんか。 村松:遅刻しないように注意していますけれども、途中、事故が起ったり、満員電車で何台も待たされたりすると、たまに遅刻してしまうこともあります。 李:そうですか。ああ、もう、学校に着きましたね。それでは、失礼します。 村松:では、また。 (教員室で) 李:先生、失礼します。 村松:はい、どうぞ。何ですか。 李:先生は今日何時ごろお帰りになりますか。 村松:四時ごろ帰ろうと思っています。まだ時間がありますから、お茶でも入れましょうか。 李:お茶なら私がお入れいたしますから、先生はどうぞおかけください。 村松:どうもありがとう。 李:ちょっとお聞きしたいことがありますが、よろしいですか。 村松:ええ、いいですよ。 李:けさ、教室で先生が教えてくださった敬語のことについておたずねしたいのです。 村松:どんなことですか。 李:日本語では、どんな時に敬語を使うのでしょうか。 村松:話し相手が目上の人であったり、話題の中に出てくる人が尊敬すべき人であったりすると、日本語では敬語を使います。 敬語にはいくつかの型があって、それによって敬意の程度を表すことができるのです。 李:しかし、私は敬語の使い方を知っているのによく間違えるんです。どんな点に気をつけたらよろしいでしょうか。 村松:まず尊敬語と謙譲語の区別、それから聞き手や話の中に出てくる人に対する話し手の表す気持ちなどですが、 詳しいことは前に『敬語の使い方』という文章に書きました。 李:何にお書きになったんでしょうか。 村松:『日本語ジャーナル』という雑誌です。 李:先生は第何号に発表されたんでしょうか。 村松:第何号か忘れましたが、もう二年以上前です。 李:その雑誌をお借りできるでしょうか。 村松:いいですよ。いま家に置いてありますけれど、いつほしいのですか。 李:なるべく早いほうがいいのですが。 村松:それならあす持ってきましょう。 李:お願いします。先生はあす同じ時間にご出勤ですか。 村松:ええ、いつもの時間に来ます。 李:あ、四時になりました。もう先生のお帰りの時間ですね。 お忙しいところをお邪魔して申し訳ありません。 村松:どういたしまして。 李:大きなお荷物がおありですね。お持ち帰りになるのですか。 村松:ええ、持って帰ります。参考書と学生の宿題です。 李:それでは、スクールバスのところまでわたしがお持ちいたしましょう。 松村:それはどうもありがとう。 単語 敬語 けいご 目覚める めざめる 目を通す めをとおす スクールバス 出勤 しゅっきん 教員室 きょういんしつ ジャーナル 載る のる 太極拳 たいきょくけん 重要 じゅうよう 記事 きじ じっくり お宅 おたく 新聞を取る しんぶんをとる 人民日報 じんみんにっぽう チャイナデーリー 散々 さんざん 合わせる あわせる 遅刻 ちこく 台 だい お茶(ちゃん)を入(い)れる 相手 あいて 目上 めうえ 話題 わだい 型 かた 敬意 けいい 程度 ていど 尊敬語 そんけいご 謙譲語 けんじょうご 区別 くべつ 聞き手 ききて 話し手 はなして 第何号 だいなんごう 以上 いじょう なるべく 明日 あす 申し訳ない もうしわけない 読解文 敬語の使え方 日本語の敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語があります。 尊敬語は話し相手や話題の人に対して、尊敬の気持ちを表す敬語です。 話題の人や、その人に属する物、事、その人の行為、状態について言う場合に用います。 尊敬語にはいくつかの型があり、それによって敬意の程度を表わすことができるのです。 謙譲語は、話し手が聞き手に対して、自分自身、または話題になっている自分の身近な者、 例えば家族や親しい仲間などの行為をけんそんして言う言い方の敬語で、話し手側(家族、仲間など)を話題の人にするときに使われる場合が多いので、 尊敬語と取りちがえないように、特に注意して話さなければなりません。 丁寧語は、話題の人の行為を尊敬して言い表わしたり、話し手側をけんそんして言い表したりするのとちがって、 ものごとを丁寧に言うことで相手に敬意を表わすことばです。 また、ものごとについて上品に、やさしく言い表わす場合にも用いられます。 以上、敬語について説明してきましたが、敬語は時と場合によって使い分けないと、 かえって相手に失礼なこともありますから、気をつけて話しましょう。 単語 丁寧語 ていねいご 対する たいする 属する ぞくする 行為 こうい 状態 じょうたい 用いる もちいる 自分自身 じぶんじしん 身近 みぢか 仲間 なかま 謙遜 けんそん 取違える とりちがえる 言い表わす いいあらわす 物事 ものごと 上品 じょうひん 使い分ける つかいわける