第六課 なぞなぞ遊ぶ わたしたちの子供の時分、といいますと 大正のころということになりますが、 そのころは、学校でもよく、 なぞのかけっこをして遊びました。 なぞを出す者が教壇に立って出して 分かった者が手を上げて答えるのですが、 教室の生徒が紅白に分かれて 先生の審判で、競争をしたりしました。 みんな、うちの大人たちから聞いてきて、 難問を出したりしましたが、 そうそう新しいのがないために、 うちで聞いてきたのがかち合って答えがすぐ分かって、 大笑いになったりしました。 この木は、ナアニ という、たいへん簡単なのがありました。 この答えは、「此の木」すなわち「柴」なのですが 柴という字はまだ学校で習っていない字だったので、 先生の審判で、点になりませんでした。 しかし、「この木」が一度出てしまったので、 次に「この糸の色は、ナアニ」というのは すぐに「紫」と答えられてしまいました。 素朴な、少年少女のなぞなぞ遊びは、 すっかり下火になってしまったように思いますが どうでしょうか もしそうだとすれば、 そのなぞなぞ遊びに代わる遊びは 今のみなさんにとっては何でしょうか。 わたしは、テレビのクイズ番組というのが、 なぞなぞ遊びの空白をうずめているのだと思います。 クイズも確かに一種のなぞ解きの遊びですが、 今まで見てきたようななぞとはずいぶんちがうと思います。 テレビのクイズ番組のクイズは 質問はおおむねまともです 中にはふざけたものや、 とんち式のものもありますが、 多くは答えに正確な知識にもとづいたことを要求しています。 わたしは動物です。 わたしは何でしょう。 さあ、ひろしさん、当ててください。 はい、あなたは水の中にいますか。 いいえ、いません。 四つ足で歩きますか。 いいえ。 じゃ、空を飛べますか。 いいえ、あまり飛べません。 あまり……。 少しは飛べるのなら、鳥の仲間なんですね。 ええ。でも、飛べるというほどではありません。 鳥小屋に入れられていますか。 はい、そうです。 ときどき外にもでますけど。 はい、そこまで。 だんだん分かってきましたね。 では、はるお君、この後を続けて聞いてご覧なさい。 はい。あなたは鶏でしょう。 そうです。でもそれだけではまだだめです。 ううん。じゃあ、あなたは卵を生みますか。 いいえ、まだ生みません。 まだ……。あ、分かった。 あなたはひよこでしょう。 そうです。当たりました。 当たりましたね。 よく考えて、うまい尋ね方をしたからです。 とし子君の答え方もはっきりしていて上手でした。 単語 なぞなぞ(謎謎) 時分 大正 なぞ(謎) なぞのかけっこ 生徒 審判 競争 難問 そうそう かち合う 大笑い 柴 紫 点 糸 そぼく(素朴) 少女 下火 クイズ 空白 一種 解く おおむね(概ね) まとも(真面) ふざける とんち(頓智) としこ(俊子) ひろし(宏、寛?広) 鳥小屋 はるお(春夫) にわとり(鶏) む ひよこ(雛) 象 王様 一頭 大騒ぎ 役人 さっそく(早速) はかり(秤) 申し出る 掲示 だれひとり(誰一人) たびたび(度度) 催促 沈む 見物人 じっと 別 外側 おろす(降ろす?下ろす) 石 積む