[00:00.00]第十一課 留守番電話 [00:11.73]留守番電話を利用する人が多くなった。 [00:18.23]留守番電話は確かに便利である。 [00:23.43]だれも家にいないときにだれかから電話があった場合、 [00:31.35]あとで録音テープでその内容を知ることができる。 [00:37.93]家にいるときでも、 [00:43.34]ふろに入っていたりして [00:47.23]電話に出ることができないこともある。 [00:52.24]例えば、食事中やテレビでおもしろいドラマを見ているときなど、 [01:01.73]電話に出なくてすむのは、 [01:06.22]ありがたいことである。 [01:09.62]それほど便利なものであるが、 [01:14.61]つけたくないと言う人も多い。 [01:19.12]電話をかけたとき [01:23.30]相手の声でなく、録音テープを聞くのが不愉快なためである。 [01:31.40]「いま留守です。ピーという音のあとで、 [01:38.90]ご用件をお話ください [01:42.97]という事務的な声を聞くのが嫌いだし [01:48.67]人にもそんな声を聞かせたくない、 [01:54.16]という人が多い。 [01:57.76]留守番電話の伝言にしたがって [02:03.45]電話してみると [02:06.85]その人も留守番電話をつけているので、 [02:12.55]録音テープに話をする。 [02:17.14]その返事もまた録音テープということもある。 [02:24.04]こうなると、人と話すのでなく [02:30.33]いつもマイクに向かって話すことになる。 [02:35.25]普通の人も、テレビやラジオのアナウンサーになったようなものだ。 [02:43.13]話しかけてすぐ返事を聞くことができるのが、 [02:49.74]電話の魅力であるが、 [02:53.53]留守番電話ではそれがない。 [02:58.73]手紙を受け取って読んで、 [03:03.43]返事を書いて送るのと似ている。 [03:07.92]もちろん、その早さは手紙と比較にならないが [03:15.21]同時性がないという点では、 [03:19.42]手紙時代に逆もどりしたような気がする。 [03:25.01](一)(留守番電話の例。 [03:34.31]Aは男性であるが、女性でもほとんど変わらない。 [03:45.02]もしもし、山下さんですか。川上ですが [03:52.52]山下でございます。 [03:57.71]ただいま留守でございます [04:02.02]恐れ入りますが、ピーという信号音が聞こえたら [04:08.42]ご用件を話してください [04:12.60]テープは一分間ですから、 [04:17.41]一文以内にお願いします。 [04:22.11]ああ、これは留守番電話だな。 [04:28.51]ピー。 [04:31.91]えーと、あのう、もしもし川上ですが……。 [04:42.80]今度の仕事のことなんですけどね、 [04:48.89]この間15日で結構ですと言ったんですが [04:55.39]ちょっと都合がわるくなりましたので… [05:01.69]すみませんが、十八日か二十日にしてくださいませんか。 [05:09.29]できれば二十日のほうがいいんですが……。 [05:15.98]どうなんですか [05:20.00]あ、返事はないんだった。 [05:24.49]あのね、それから、田中さんに連絡したら [05:31.99]家の人の話では、いまヨーロッパ旅行中なんだって……。 [05:39.20]うらやましいねえ。 [05:43.48]それでね、あの……。 [05:49.10]ピー。 [05:53.28]ええ?ひどいなあ。 [06:01.98](二)(夫と妻の会話) [06:09.79]ねえ、うちも留守番電話にしましょうよ。 [06:17.00]どうして。 [06:20.29]うち、共働きだから、昼は留守が多いでしょ? [06:27.19]うん。 [06:30.40]友だちが、「お宅はいつも留守ね」っておこるのよ。 [06:36.49]夜、電話してくださいって言ったら? [06:42.89]でも、夜は電話がきても、 [06:47.80]出られないことが多いのよ。 [06:51.59]おふろに入っていたりして……。 [06:55.29]うん [06:58.19]テレビでおもしろいドラマやってるとき [07:03.68]電話に出ると、話が分からなくなるし…… [07:08.70]そうだね。 [07:12.38]だから、留守番電話がいいと思うけど。 [07:17.66]でも、人に電話したとき、録音テープの声が聞こえるのは、いやだな。 [07:28.47]そう。 [07:31.06]ピーっていう音を聞いて [07:35.37]急いで録音するんだろう? [07:39.15]ええ、そうよ。 [07:42.58]アナウンサーじゃないんだから、 [07:46.96]マイクに向かって話すのはいやだよ。 [07:51.28]でも、うちが留守番電話にしたら、 [07:56.37]録音をするのはほかの人よ [08:00.86]わたしたちが録音するんじゃないのよ。 [08:05.46]自分がしたくないことは、ほかの人にもさせたくないよ。 [08:11.26]ああ、そう。じゃ、留守番電話はやめましょう。 [08:18.47]いいの? [08:22.67]ええ。残業を断って、早くうちに帰るね。収入は減るけど。 [08:30.88]応用文 テレビ電話 [08:37.96]兄さんに、アフリカから、宇宙中継でテレビ電話がかかってきた。 [08:46.76]テレビスクリーンに出てきた人の顔を見て [08:53.58]みんなはびっくりした。 [08:57.76]色のまっ黒な黒人だったからだ。 [09:04.76]黒人は、まっ赤な口をぱくぱくと開けて、 [09:11.97]なにか、いっしょうけんめいにしゃべる。 [09:16.56]だが、なにを言っているのか、さっぱり分からない。 [09:23.07]兄さんは、英語で聞き返した。 [09:29.16]しかし、黒人は首をかしげ、いっそう早口になって。 [09:37.83]わけのわからないことばをまくしたてる。 [09:42.61]お父さんがフランス語で試してみた。 [09:49.22]しかし、それもだめ。 [09:53.92]兄さんが、あまりうまくないドイツ語で [10:00.71]話しかけてみたが、こらまた、むだだった。 [10:07.61]その黒人は、その国語のどれも習ったことがないらしいのだ。 [10:15.81]「よわったな…….。この人のことばは、 [10:22.92]どうやら、アフリカのスワヒリ語らしいけど [10:29.71]ぼくは、アフリカ語は弱いんだ。」 [10:34.62]「わたしもだめだな。 [10:38.82]インドネシヤ語なら、すこしは分かるんだが。」 [10:44.81]お父さんも首をひねった。 [10:50.00]黒人も、弱ったような顔で、こっちをながめている。 [10:57.50]すると、ママがふとおもい付いたように [11:04.19]ホーム電子頭脳の前に寄り、 [11:08.89]マイクを取って話しかけた。 [11:13.28]「あなたの記憶装置には、 [11:18.77]アフリカ、スワヒリ語は記録されていたかしら? [11:25.06]ホーム電子頭脳の信号ランプが、二?三回、 [11:31.36]ぱちぱちとまたたいたかとおもうと [11:36.55]スピーカーから気持ちのいい男の声が流れてきた。 [11:42.88]「ハイ。アジア、アフリカ語ハ、二十か国語ガ、 [11:50.66]キオクサレテイマス。 [11:54.47]スワヒリ語モ、ホンヤクデキマス [12:00.46]「それはありがたい。」 [12:04.56]兄さんがおどり上がって言った [12:10.07]「それじゃ、いまテレビ電話に出ている人のことばを通訳してくれ。」 [12:18.66]「カシコマリマシタ。」 [12:22.66]兄さんは、ホーム電子頭脳のダイヤルをひねて、 [12:29.87]テレビ電話と連結した。 [12:33.55]それから、テレビ電話に向かって言った。 [12:39.85]「もう一度始めから話してください。 [12:45.54]今度は分かったでしょう?」 [12:49.93]すると、黒人の顔がぱっとうれしそうに輝いた。 [12:57.85]もちろん、今度は兄さんの日本語は向こうには [13:04.43]スワヒリ語に通訳されて聞こえたのだ [13:09.34]と思うと、スピーカーから流暢な日本語が響いてきた。 [13:17.23]ホーム電子頭脳の翻訳回路がスワヒリ語を日本語に通訳したのだ。 [13:26.82]「わたしは東アフリカ共和国のロンボクというものです。 [13:35.20]いま日本東都大学に留学しているメケメケのいとこです。」 [13:43.80]「そうか!メケメケならば、ぼくの親友ですよ。」 [13:51.58]と兄さんは大きくうなずいて言った。 [13:57.59]「それで、メケメケとは連絡が取れたんですか。 [14:04.70]ロンボクは困ったような顔になった [14:10.39]それがだめなのです。 [14:15.80]東都大学の留学生会館に電話したんですけど [14:22.90]留守なんです [14:25.59]それで、いちばんのお友だちのあなたならば、 [14:32.70]行き先が分かるかもしれないと思ってお電話してみたんです。 [14:39.49]ああ、それなら分かりますよ。 [14:45.39]兄さんはせき込んで、 [14:50.20]メケメケはいま南極市へ行く途中なんです [14:56.60]いまごろ南極行きのロケット機に乗っています。」 [15:03.18]それは困った……。どうして連絡を取ればいいでしょう? [15:10.18]ロンボクが眉をひそめて言った [15:15.88]大丈夫ですよ。この電話を切って少し待ってください。 [15:23.66]いまこっちからそのロケット機にテレビ電話をかけて、 [15:30.66]メケメケを呼び出し、 [15:34.37]そっちへ電話するように言ってあげます。 [15:38.97]ロンボクが顔を輝かしてうなずいた。 [15:46.26]単語るすばん(留守番) 留守番電話 ドラマ [15:58.88]不愉快 事務的 伝言 従う [16:10.66]返事 アナウンサー 話しかける 魅力 [16:23.56]比較 同時性 逆もどり 男性 [16:36.68]もしもし 女性 山下 川上 信号音 [16:51.46]以内 うらやましい(羨ましい) [16:58.67]夫 妻 ねえ 共働き 減る [17:13.27]テレビ電話 アフリカ 中継 スクリーン [17:25.37]まっくろ(真っ黒) 黒人 真っ赤 [17:33.86]ぱくぱく だが さっぱり 聞き返す [17:45.85]いっそう 早口 まくしたてる ためす(試す) 弱 [17:57.73]弱る どうやら スワヒリ [18:07.56]インドネシア 首をひねる ふと [18:17.64]思い付く ホーム 電子頭脳 装置 [18:29.24]ランプ ぱちぱち またたく(瞬く) [18:39.03]スピーカー 躍り上がる ダイヤル [18:49.22]ひねる(捻る) 連結 かがやく(輝く) [18:58.91]流暢 回路 共和国 ロンボク [19:12.63]メケメケ 親友 うなずく(頷く) 会館 [19:24.83]行き先 せきこむ 南極市 [19:33.92]ロケット 眉をひそめる 輝かす