(僕は何も知らなかった。これから起こることさえ、気付きもしなかった。だって、彼女はすぐそこに、いつもと変わりなく、僕のそばにいたのだら。) 竹本:滑り込みセーフでした。さっき出来上がったんだ。 はぐ:すごいね。 竹本:うん? はぐ: 離れて見るとシンプルなのに、近付くとすごく凝った作りになってる。い手が掛かっているのに澄んでいる。すごくきれい。竹本君、どうしたの? 竹本:いやあ、すげい嬉しくて、何つうか、あんまり褒められることって、ないから…はぐちゃん、俺修復師になろうと思うんだ。 はぐ:修復師? 竹本:うん、お寺とか神社とかを修復しながら、全国を転々とするんだ。古い建築物って、図面も何も残っていないのがほとんどだから、解体した実物のパーツを実際に見て、どうやって作られたのを解読していくんだ。