[00:00.460]ところが、蟹というものは、あまり大きなものではありません。 [00:07.250]蟹と比べたら、狸はとんでもなく大きなものであります。 [00:14.440]その上、狸というものは、体中が毛むくじゃらであります。 [00:21.940]ですから仕事はなかなかはかどりません。 [00:27.750]蟹は口から泡をふいて一生懸命鋏を使いました。 [00:34.740]そして三日かかって、やっとのこと仕事は終わりました。 [00:42.150]「じゃ、約束だから、私のお父さんの毛もかってくれたまえ。」 [00:49.300]「お父さんというのは、どのくらい大きな方ですか。」 [00:55.290]「あの山くらいあるかね。」 [00:58.540]蟹はめんくらいました。 [01:02.030]そんなに大きくては、とても自分一人では、間に合わぬと思いました。 [01:10.010]そこで蟹は、自分の子どもたちを皆床屋にしました。 [01:18.520]子どもばかりか、孫もひこも、生まれてくる蟹は皆床屋にしました。 [01:26.730]それでわたくしたちが道端に見受ける、ほんに小さな蟹でさえも、ちゃんと鋏を持っています。