光る月のました黒いねこは伸びている 目の中に二つ目と三つ目の月を入れている 黒くて暗いひみつの道 何もかも独り占め 旅は素敵ひとりぼっちさ しんとした時は流れ 月はじっくりやせてゆく わたしが眠っているあいだに 誰に見せるものでもなく 誰に問いかけているものでもなく 物語はまるで映画のように 観客のいない映画のように しんとした時は流れ 月はゆっくり太っていく わたしが眠っているあいだに もしもすべてのことを世界のあまたを さまざま飛びかう声や顔やしぐさを 悲劇を 喜劇を あふれるユーモアを 全部を見ている誰かがいてくれるのなら 全部を抱きとめている母がいるのなら もしくはいないなら しんとした時は流れ 月はわたしを変えていく わたしが眠っているあいだに しんとした時は流れ 月もわたしも老いていく わたしが眠っているあいだに わたしが眠っているあいだに