わたしは なにも 見ない あなたが知ることのない 地中奥深くで 生きている わたしは なにも 語らない あなたが行くことのできない 深海の涯で 生きている 定められた虚空の抱擁に身を任せて 与えられた永遠の一片を受け入れて なんの条件も なんの束縛もないままに この惑星と交わした約束を ただ果たすために わたしは なにも 問わない あなたが忘れかけている 空の彼方で 生きている わたしは なにも 示さない あなたが失いかけている 森のすべてで 生きている 積み上げられた過ちの重さを信じながら 求められる解答の数を疑いながら たとえ小さな石でも 階段の一段となるように たとえわずかな一滴も 大河のはじまりとなるように それはこの鼓動から思うよりも遠くにあるだろう それはこの血の流れから思うよりも近くにあるだろう それはこの呼吸から思うよりも遠くにあるだろう それはこの体温から思うよりも近くにあるだろう …… わたしは 決して 奪わない あなたが残してきた時間の轍の一端で 生きている わたしは 決して 殺さない あなたが選ぶことのできない 道のどこかで 生きている 放たれた光は闇を責めることはなく 闇もまた光あるがゆえに在り続ける 形にとらわれず 名前に惑わされず わずかな一点一点はただ線であり続ける わたしは 決して 苦しめない あなたと叶えようとしている 夢のつながりで 生きている わたしは 決して 憎まない あなたとかならず報われる 愛が生まれる場所で 生きている なにもかもが無限であることを許されながら 命が ただ有限である真実と向かい合い 「同じ」という希望と 「違う」という希望で 終わることのない絶望をも きっと越えてゆける わたしは 決して