くちびる慣れない紅さして貴方が待つ日本橋へ お姉様譲りお古の浴衣少し丈が短すぎて 淡い絞り夕顔の模様 「よく似合うよ」と言いながらも貴方笑いこらえてる 人の波右左避けながら歩く貴方の後ろ まるで雀みたいにチョコマカついてく私忘れないで 貴方時計見て心配ばかり 浅草で買った飴色の髪飾りに気がついて 先行く貴方の後ろ姿どうにも詰まらぬ私の隣 膨れっ面でカラコロカラコロ足早に一尺一寸近づいて ユラリユラリと走る地下鉄に揺られて不意に背中押されて 思わず腕につかまり嬉し恥かしこのままでいきましょ隅田川 改札くぐり抜けて上がれば目の前に隅田川 「まだ時間があるね」と言って貴方背中向け歩きだした 急に人混みに消える姿 泣きそうな気持ち駆け出してギュッと掴んだ帯の縁 「スミマセン!」を繰り返し唱えて進む仲見世~浅草寺 まるで流れに逆らい泳ぐ迷惑な二匹の金魚 貴方賽銭を放り投げて ささやいた恋の願い事私顔が赤らんだ からかわれむきになり言い訳にした二人を照らす夕陽 プイッと拗ねたふりして困らせてみせた一分一秒長くて いぢめた詫びに買わせた苺カキ氷少し塩っぱい涙味 繰り返し思い出し嬉しさ誤魔化しそろそろ戻りましょ隅田川 キラキラ水面に映る燃える光の赤や青や紫 胸を揺らす轟音夜空に咲きます一尺三尺弾けた 夏が終わっても来年もその先も五年十年経っても いつまでも貴方と一緒にと願って叫ぶ玉屋! 鍵屋! 見上げて見惚れて溶けた苺カキ氷流れて足濡らして ハンカチ出し拭いてくれた優しさ嬉しこっちを見ないでよね隅田川 夜空に咲く炎の華