莓色のリボン贵方が呉れたから 大事にして居たのに 赤い鳥が咥えていって仕舞ったの くどい厭な朱色 藥指撫でつけ くちびるに塗りたくると 見たことのない顔がわらふ 逃げ込んだ小部屋に 御菓子など満たして 大好きな色で壁を 塗り塗り塗り塗り 昼夜あけ暮れて 扉を閉ぢる蝶番を水飴で絡めて 又と動かぬやうに 嶋呼、あ! 窓は一つ残らず暗幕で隠して どうかせめてわたしの御城だけ 散らかるこの部屋に蹲る影法師 きたないの御免なさい もう貴方にも見せられない 色彩ばかり溢れたこの部屋に 一つ、ぽかりと空けられた針穴が 外の絵柄を否が応にも映し出して 今日もほんとうにはくるえない 目と耳を塞ぐわたしの頭に 次次と映し出される幻燈は 貴方貴方貴方のことばかりで あな憎らしや此の恋心め わたしの為ではない餘りものの愛情を 投げて寄越される度にほら 生温かく幸せな心地で進んだ針が又一つ戻る 貴方を忘れたくて仕方がないの 今日もこの部屋の中で動けずに けれど心配は無用です なぜならば置いてゆくのは貴方だから