わたしの胸に巣食ふ苦い初恋は 何時になれば幕を引いて終はるのだろう 砂糖菓子で造るきらめく思慕を くちに運ぶたび崩れていく酩酊して 初恋は実らないと誰もが嘯くけれど 二度目の恋なら実るのでせうか 其れならば二度目も貴方に恋をしませう 貴方は昨日と違ふ貴方で 今朝咲いた花とよく似た色ね わたしは昨日とおなじわたしで 今朝枯れた花とよく似た色してた これがもう幾度目の失恋でせうか この思慕の純潔が損はれ久しく わたしは美しくなどはないけれど せめてきよらかで居たいのです 朝露のやうに 幼いこの初恋に幸せな閉幕などないけれど 手放せないならば此処でわたしと 何時までも手を取り踊りませう 甘くて苦い実らぬ花よ 私の中大きく膨らんで 飲み込めないの 吐き出せないの はしたなく可哀さうな赤い花 贋物で善い只ひと時だけ 果敢ない夢を見せては呉れませんか 抱きしめて愛を囁いて それが御芝居でも幸せなのに 初恋よ あなたは其の棘で私を刺すけど 私はあなたがとても愛しいから 硝子の箱に入れて大事にしませう 棘だらけのやわな初恋よ 今朝もまた咲く失恋(おわり)に寄せて さうしてまた貴方に恋をする お慕いするのは生涯貴方だけ 実らぬままに散る初恋よ 秘密の庭で歌ひつづけるわ どうか何方も氣附かぬ侭で 咲いて咲いて 咲け わたしのいとしい仔