夏の海は連れて来た。 騒ぐ波音の中で、何も知らないはずの心を。 光の無い暗い場所。とても深い闇の底。 その手には何も持たず、笑ってた。 大切な人の優しい温もりを、 掌に乗せても帰って来ない。 時だけが流れる。 真夏の追憶、どこに消えたの? あの波間に揺れた星のように。 真夏の追憶、どこに消えたの? 哀しみを奪ってあげたい、今。 夏の海は連れて来た。 高く上がる太陽に、似付かわしく笑った心を。 物語の数だけの感情があったから、 わたしの欠片は今もここにいる。 何を求めたくて、手を伸ばしたの? 誰も知らない。 真夏の追憶、どこに消えたの? あの夜空に落ちた夢のように。 真夏の追憶、どこに消えたの? 悲しみはまだ繰り返す。 いつか帰れるところがあるなら、 全てを守れる気がした。 真夏の追憶、どこに消えたの? あの水面に映る月のように。 真夏の追憶、どこに消えたの? かなしみはまだ繰り返す。 海はいつでも知っているから。 真夏の追憶、どこに消えたの? 夏の海は連れて来た――。