宇佐見 秋彦  多分、孝浩がこの世に一番大切なものは、 弟なのだと思う 高橋 孝浩   ごめんウサギ、ごめん! 美咲の授業参観あるのすっかり忘れてたんだ! 一緒に遊びに行けない。本当にごめん! 宇佐見 秋彦  ああ。 高橋 孝浩   あんなに前から約束してたのに… 宇佐見 秋彦  いいよ、仕方ない。 宇佐見 秋彦  これって何回目だ? まあ、親みたいなもんだろうから仕方がないか。 それにしても、こんなにまで孝浩を夢中にさせる弟って、 どんなやつなんだ? きっと孝浩に似て、 賢くて性格よくて可愛いくて、 利発な子なんだろうな… 後日 高橋 孝浩   ウサギ、ちょっと、 弟の読書感想文、どうなおしたらいいか、 アドバイスくれないかな? 宇佐見 秋彦  感想文なんて、 思ったこと書けばいいだけだろう? 高橋 孝浩   いや、それはそうなんだけど、先生にも注意されちゃってさあ… 宇佐見 秋彦  ふん?見せてみろ。 高橋 美咲   「『走れメロン』を読んで」、四年三組、高橋美咲。 『走れメロン』を読みました。 超感動しました。 すごいと思いました。 僕にはできないと思いました。 終わり。 宇佐見 秋彦  こいつ、ばか… しかも、『走れメロン』って… メロスだろう! 高橋 美咲   数年後、そのばかを好きになるということを、 彼はまだ知らない。 *『走れメロス』は太宰治の短編小説です。