それから、二年もの歳月が流れた。 仕事に没頭する毎日と趣味に興じる生活スタイルの中で、 少しずつ心の傷も癒え、平穏な日々を送っていた。 時々彼女のことを思い出す。 ぼくよりもっと素敵な恋人を見つけて、幸せになっていてほしい。 心底そう思う。 恋愛に関しては、ぼくは本当に駄目な人間だから。 社内で後輩の女の子から告白を受けたことがある。 なにかにつけぼくに気を使ってくれる。 とても性格のいい子で、異性としても決して嫌いなタイプじゃなかったが、 ぼくは申し訳なさそうに頭を下げるしかなかった。 ごめんね、ぼくは恋愛する資格のない人間なんだ。 後輩はえっと言ったきり、もじもじしながらずっと下を向いていた。 断りの言葉にしては意味不明に思われてるに違いない。 しかし、今のぼくには他に適当な言葉がなかった。 困ったぼくは、思いついたように言った。 そうだ、ぼくなんかよりずっといいやつが社内にいるじゃないか。 今度紹介してあげるから。 運良く上司からの呼び出しを受けて、ぼくは体よくその場を離れた。 後輩の女の子が俯いたまま立っている姿を尻目に、ぼくは足早に立ち去った。 これでいい、ぼくに恋愛感情を持ってくれるのは有難いが、 今のぼくにはそれを受け入れる自信がまったくない。 だからこれでいいんだ。 そう自分に言い聞かせたが、 逃げ場をいつも求めている臆病な自分にちょっと苦笑いした。