そんなある日仕事の同僚に合コンに誘われた。 僕はすぐさま断った。 「ごめん、僕はそういうのが苦手だから」同僚は困ったように言った。 「頼むよ。どうしても一人足りないんだ。 相手の中に気になる女性がいて、どうしてもその人に会いたいんだ。 俺たち仲間だろう?だから頼む、なぁ~」 拝み倒すように頭を下げる同僚の前に、僕はしぶしぶ承諾した。 仲間とか言われたら仕方がない。なに~、ただの飲み会だと思えばいい。 一次会が終わったら、さっさと帰ればいい。 今回は人助けと思えばいいんだし。 同僚に連れられて行った。 おしゃれなイタリアレストランにもうメンバーは集合していた。 殆どが知らない人だけに、最初は緊張もしたが、徐々に打ち溶け合って場は盛り上がっていた。 僕にとっても合コンは初めての経験だったし。 「まあ~これもありかなぁ」と思いはじめたごろ、 僕にずっと視線をむける女性の存在に気付いた。 かなりの美人だったし、僕も悪い気はしなかったが、 席が離れていたため、ろくに話もできなかったから、 さほと気にも留めていなかった。 しばらくして、同僚が席換えしようと言い出し、 彼女が僕の前に座ることになった。 初めはちょっとぎごちなかったが、 話をするうちに、 趣味のことやものの考え方について意気投合するようになり 、 しまいには僕たちは他の人そちのけて、 大いに盛りやがった。 然う斯うするうちに、お開きの時間になり、 レストランを出たあとは 銘銘解散することになった。 カップルになったもの、 結局相手ができなかったものとに別れ、 後は自由行動となった時、 僕の隣に彼女がいた。 僕の手をしっかり握っている。 僕も強く握り返した。そしてそのまま夜の街へと消え、 一夜を共にした。 殆ど一目ぼれだった。 あれほどまでに臆病だった自分が信じられなかった。 きっと運命の出会いだったんだ。 そう考えるほかない。 世の中にはそんな話はいくらでもある。 もちろん自分にそんなことが起こる何で、 夢にも思わなかったが、 僕はそう考えると同時に二度とあの過ちに繰り返してはいけないと心に固く誓った。 そのためにどうすればいいかなんで、 まるで見当はつかなかったが、 そんな思いさえ、 僕に忘れさせるほど彼女は魅力的だった。 僕は彼女に夢中になった。 いつ何時でも一緒にいたい。 できればすぐにでも一緒に暮らしたい。 そんな思いもあって、 僕はできるだけ、 彼女と一緒に過す時間を作ることに懸命になった。 彼女もそれを望んでいた。 彼女の愛情はとても純粋に思えた。 何があっても一緒僕のそばにいる。 逃げなければならないことが起きたら、 一緒にどこへでもついていく。 たとえ僕が犯罪を犯して収監されても、 ずっと待っている。 用言の仕方が極端だったが、 僕はその言葉に胸を打たれ、 本当の理解者が現れたとさえ思った。 確かに仕事は忙しい、 でもいくらだって都合をつけられるようにすればいい。 休みを取る分、もっと時間を有効に使って働けばいい。 そして彼女が望むことなら、なんでもしてあげよう。 前の彼女にしてあげられなかったことを今の彼女にしてあげることで償おう。 僕の頭の中は彼女のことでいっぱいになった。