「生まれつき四肢に障害のあった私のせいで 喧嘩ばかりしていたババとママは、 お医者さんの薦めに従って契約書にサインした。 こうして、生まれてから一度も外へ出なかった私は、 病室で迎えた十一歳の誕生日に、 初めて自由に動く自分の体を手に入れたのだ。 私は『公社での生活』をとても気に入っている……」 《私のお気に入り》(La mia cosa favorita) → 朝の静謐な空気 《私のお気に入り》(La mia cosa favorita) → 洗剤の香り 《私のお気に入り》(La mia cosa favorita) → 空と雲と太陽と 《私のお気に入り》(La mia cosa favorita) → 自由な体 嗚呼…それら全ては 病室のベッドの上に 嗚呼…無かったものばかりだ──《私は幸せだ》 「私たちには、それぞれ公社の大人の人が担当についている。 訓練でも仕事でもいつも一緒なので、 二人まとめてフラテッロと名付けられた。 『フラテッロ』…それは"兄弟"という意味だ……」 政治家の暗殺 現場の下見 逃走経路の確認 それも仕事の內 裏口で出会った 少年は名乗った 彼の名はエミリオ とてもよくしゃべる 私は嘘を吐いてはいないけど 彼を騙しているのだろうか アマーティの《ヴァイオリン》だと彼が勘違いしたのは《銃》(Fucile) ──それが私の仕事道具だ…… 「もし仕事中誰かに姿を見られたら…必ず殺せ」 ──とジャンさんは言った…… 仕事が終わり 部屋を出たところで エミリオに出会った 「ええと…こんな時何て言うんだっけな…ああそうか…ごめんね」 「朝目が覚める度、いちばん気になることがある。 それは、今日も自分の体がちゃんと存在するかということ……」 良かった ← 動く → 『自由な体』 → 素晴らしいことだ 四肢を失う夢を見て 泣きながら起きる この恐怖が解りますか? 沉みながらも見上げた水面から 差し込む陽の光 泡沫の《幻想》(ゆめ) 浮びながらも見上げた水面より 遥かなる高みに 輝ける《理想》(ゆめ) 《太陽の国のお姫様》(La principessa del regno del sole) 黃昏に染まる海辺を走る…… 「自由な体。優しい人達。楽しい每日。 社会福祉公社、私はここでの生活をとても気に入っている…」 ──太陽の国のお姫様(La principessa del regno del sole)